暑苦しさから見出す独自の演技法
冒頭のインタビューではおまけとして、花岡役の岩田のツアーライブに戸塚が足を運んだことも明かされている。朝ドラ俳優ではなくアーティストの姿でステージに立つ岩田を見て「本当にほれた!」と戸塚。筆者もこのツアー公演を2度観たから、気持ちは共有できる。
インタビューの場を借りて「本当にほれた!」と発言する戸塚は、どこまでも律儀な人だと思う。伊藤沙莉の誕生日のときには、プレゼントの六法全書に出演者のサインをもらうために、岩田が所属するLDHまでサインを求めて行く人でもある。
正義と誠実を重んじる轟役の俳優は、現実でも熱い人なのだ。戸塚は自分の熱い性格を役柄に反映させるのがうまい。熱さが暑苦しさまで高められ、大袈裟な演技の沸点を超える演技。彼はそれを武器にしながら、現在までに独自の演技法を見出している。
福田雄一監督からの言葉が極貧時代の救いに
彼の演技が開眼した背景にはある映画監督の存在がある。そのことについて、『人生最高レストラン』に出演した戸塚が、極貧時代のエピソードとして話していた。
2010年のジュノン・スーパーボーイ・コンテスト(第23回)での理想の恋人賞受賞を経て、『仮面ライダーウィザード』(テレビ朝日、2012~2013年)で魔法使いに憧れる助手役で注目されるが、仕事が一定ではなく一杯の牛丼を食べるのにも苦労していたというのだ。
俳優としての強みや方向性で悩んでいたとき、『アオイホノオ』(テレビ東京、2014年)の福田雄一監督からまさに救いの言葉をもらう(その後、福田監督が演出した牛丼屋のWEB CMに戸塚が出演するのだが、彼にとっての牛丼屋は救いを求める教会だ)。
当時の戸塚の演技に対して福田監督は「負け芝居が好き」と評した。つまり、自分側からのアクションではなく、むしろ相手の演技を受けての“リアクションの演技”が優れているのだと。この一言でじわじわ覚醒した戸塚は、例えば、福田雄一監督作だと『銀魂2 掟は破るためにこそある』(2018年)のラストで、ひたすら周囲の状況に対して独り相撲的にリアクションしていく表情の豊かさを得た。
ただし、このリアクションの演技法は、別に福田雄一監督オリジナルのものではない。溝口健二監督作に出演した香川京子がひたすら「反射していますか、反射してください」と言われたことなど、日本映画の古典期から俳優が演技をする基本的な方法論だった。
溝口監督の執拗な演出によってリアクションの演技を探求した香川直系の俳優ということではないけれど、いずれにしろ戸塚は現行リアクション型俳優として好例的存在となった。
配信: 女子SPA!