●自動精算機を諦めてフロントにセルフレジ導入
コロナ禍だけではなく、自然災害でダメージを受けたレジャーホテルであっても、自動精算機の買い替え問題は待ったなしだ。
能登半島地震で被災し、塔屋や客室天井、給水管などが破損し、ボイラーの不調も起きた石川県金沢市の「ホテル月世界」支配人、高田英治さんは「買い換え前提に数年前から少しずつ貯金してきた」ものの、買い換え自体を諦めたという。
「購入台数や工事内容によっては値引きがあると思いますが、今回、業者から提示された金額は1台100万円以上でした。コロナ禍による売上減少と持続化給付金対象外にはじまる公的支援除外によって貯金の多くを吐き出し、さらに元旦の能登半島地震で被災して、復旧工事や修繕工事に多大な出費がかさんだので、断念せざるを得ませんでした。
利便性を損なわず安価な他メーカーを探したのですが、あからさまに『レジャーホテルとは取り引きしたくない』とか『業務多忙につき』など、体よく断られてしまって。そこで隣接する姉妹店と共同利用で、フロントセルフレジを導入することにしました。
また、全客室内でクレジットカードとPayPayの両方で支払いできるセルフキャッシュレス決済を導入する予定でしたが、PayPayのほうの審査にはまだ通っておりません。審査の申し込みもルートが狭く限られていますし、一旦は通っても利用停止にされたり、強制解約されたという話も聞いています。
今後、業界内からクレジットカードと同様に使えるよう、要請する動きが出るのではないでしょうか。国はスーパーなどの小売店や飲食店にはキャッシュレス決済を進めるための補助金や助成金を出していますが、必要性や利便度が変わらないのだから、われわれの業界にも分け隔てせず支援するべきだと思います」
ホテル月世界も全12室の部屋ごとに専用ガレージがあり、その上が客室という構造となっている。客室内に精算機があるため、フロントに立ち寄らず支払いを済ますことができるが、12室分の精算機を導入するとやはり1000万円以上かかってしまう。ホテル月世界近くの同業者のうち、2軒がすでに廃業を選んだそうだ。
●一部は公的補助を受けられたものの、対象外の部分も多い
能登半島地震で被災したものの、レジャーホテルは公的支援から除外されていたことは以前紹介した(https://www.bengo4.com/c_18/n_17412/)が、被災した宿泊施設の改修工事費の一部について助成する「金沢市被災宿泊施設改修支援事業費」の対象に含まれることが3月末に決まった。
外壁や配管など、破損した部分の3分の2の費用を公的補助金で修理できることになったと高田さんは明かす。
「もう感謝しかありません。申請の締め切りの4月末に何とか間に合わせて市の審査も通り、7月初旬に約360万円の補助額が決まりました。
ただ、非常に助かったのには間違いないのですが、内装などは震災用ではなく通年の改修費補助で対応となり、補助対象外の部分も多く、当店でも客室内の内装や天井、非常用避難階段などの内壁がひどく傷んでいるところもあり、塔屋壁面のネオン照明などはどちらの補助金からも対象外でした。
そこでやむなく、ペンキ塗りや内壁補修など、一時的ですが自分で修繕したところもあります。受領予定の補助金以外に約500万円の出費になりそうです。8月段階で工事を終えたのは、緊急補修の給水管と、かなり危なかった塔屋の鉄骨補強と外壁替えだけで、他はまだ工事待ちになっています」
高田さんによると、奥能登6市町にある約10店舗のうち営業再開できたのは、わずか2店舗しかないという。公的支援のなさに加えて、人口流出による商圏縮小や再建築不可という風営法の悪影響もあり、このまま廃業してしまう店舗も多いのではないかと危惧している。
「すぐ近くの津幡町にあるラブホテルは床上浸水して休業となりましたが、今でも野ざらしの状況です。一方で周辺はきれいに直されていて、その格差を見るにつけ心が痛みます。自分も被災当事者になって身に染みてわかったことですが、自店の再建だけでもかなり労力が必要で、行政に対しては思うような動きがほとんど取れませんでした。
窮余の策として、隙間時間にSNSで訴えたのが大きく取り上げられたからこそ、部分的に改善されたに過ぎません。レジャーホテルが二次避難所や再建関連の各種補助金、復興宿泊割などから排除されたことは、有志で結成した金沢レジャーホテル協会のアンケートで約9割が『おかしい』と答えています。親身になってくれた議員もいますが、行政に訴えても、再検討されず動きもありません」
配信: 弁護士ドットコム