●誰もが当事者になる可能性があるのに「声をあげる人」はわずか
ホテル月世界の8月までの新紙幣の利用率は、実感として1~2%程度で「正直、拍子抜けしている」と高田さんは言う。しかしこれは新紙幣が導入される直前に「客室内精算機で使えるのは旧札のみで、新紙幣は姉妹店のフロント対応」と案内したことが功を奏しているからで、ホテル月世界に限った話かもしれない。
また、そう遠くない未来に南海トラフ巨大地震が来ると言われている今、被災する可能性はどの地域でもある。新紙幣には対応していかないとならないし、いつ自然災害に見舞われるかわからない。
そんな状況なのに、公的補助からの排除に表立って異を唱えるレジャーホテル関係者は、ごくわずかなのが現状だ。この「業界の足並みがそろわない」理由について、市東さんも高田さんも、経営者自身にも問題があると指摘する。
「昔のように家族経営だったり、自分たちの手で運営しているホテルは減少しています。支配人はいても、所有しているのは他県の法人で、リスク分散のためにラブホテルに投資してるケースも多いので、なかなかオーナーにつながらないんです。
私は伊勢崎東毛旅館組合というラブホテル組合の顧問をしていますが、業界のための署名活動をしても、現場の人しか集まらない。経営者自体が店舗になんの思い入れもなくて、儲からなくなればやめればいいと考えているケースもあります。
SNSを通して、息の合う同業者と出会えましたが、次第に『こんなことやってる場合じゃない』と元気がなくなり、結局、廃業した人もいます」(市東さん)
同じ「レジャーホテル」で括られたとしても、風営法届け出の有無や、立地や客層によって状況も異なる。オーナーの意向や熱意もバラバラで、まとまりにくい業界なのは事実だとしながら、高田さんは言う。
「だんだんと少なくはなってはいますが、未だに偏見を持たれている業界であるため、依然として表立って動こうとする人はわずかです。だからなのか、『等しく扱うように』程度の要望を出しても、異論のごとく扱われて抹殺されてしまうことが多いのですが、その責任は私を含め、全国の経営者たちにもあると感じています。
復旧復興はマンパワーや費用調達と時間とのたたかいなので、他の地域で大震災が生じる前に、今回までに起きた大小さまざまな問題を改善していただきたい。金沢市の『震災宿泊施設改修費補助』のように、早期に政治主導で決着する必要があるのではないでしょうか。
そのためにも、未来を変えたいレジャーホテル経営者や心ある支援者は私に連絡してほしいし、自分ができる範囲でいいので、何か行動を起こしてほしいです」(高田さん)
配信: 弁護士ドットコム