普段、自分がどんな野菜を食べているかを考えてみますと、第1位はもやしだと思います。なんせ、安いですから! そして、私は鍋物が好きで年がら年中食べているのですが、そこに欠かせないのが白菜なので、これが第2位。第3位は、まあ、ねぎとかレタスとかトマトなどが横並びという感じだと思います。
そういった、日常的によく食べる野菜の中に、きゅうりは入っていないんです。なので、前回のパリッコさんから「きゅうり」というテーマをもらった時に、「書くことあるかな」と思いました。しかし、もう少しよく考えてみると、自分が酒場に行く際、きゅうりをかなりの頻度で食べていることに気づいたんです。そもそもパリッコさんも居酒屋でよくきゅうりを食べていて、だからこそこのテーマだったんですよね。
私にとっては「家で全然食べないのに、酒場となるといきなりよく食べる野菜」がきゅうりなんです。
例えば、私が1人で立ち飲み屋に行くとします。生ビールかチューハイを貰い、軽く飲んで出る感じだとしても、最低2品は注文しておきたい。なんとなくですが、つまみ1品だけで飲んでいると申し訳ない気がします。
2品注文して、ようやくここにしばらく居ていい権利を獲得できた感じ。なのですが、私は食が細い方なので、たとえば1品を煮込みなどにしたら、もう1品は軽めにしておきたいんです。そういう時に頼りがちなのがきゅうり。
きゅうりのぬか漬けか、たたききゅうりか、塩昆布と和えたのも好きです。ポリポリした食感もいいし、どれだけ食べてもお腹を圧迫しない感じが最高です。あれってもう、ほとんど水分ですもんね。たいていの場合、メニューの中でも安い価格帯のコーナーに並んでいるし、本当に助かる。
そんなふうに酒場では大変お世話になっているきゅうりなんだから、もっと家での晩酌にも取り入れていかなくてはと、今、反省しております。
私の両親は東北の山形県出身で、子供の頃からよく家族みんなで山形に行く機会がありました。酒好きの親戚たちの宴席には必ずとっていいほど、いつもきゅうりがありました。子供の頃は特にそれを見てもなんとも感じていなかったのですが、大人になって親戚たちと一緒に酒を飲むようになったある時、ふと食べてみたきゅうりのおいしさに驚きました。
裏の畑で作っているのをもいできて、味噌をつけて食べる。それだけでこんなにおいしいものか。水と土に恵まれた山形なので、なおさらおいしいのかもしれません。
それ以来、旅に出かけた先でおいしそうなきゅうりを見ると、味わってみたいと思うようになりました。他の野菜もそうかもしれないですが、いつもスーパーで買う安いものと、自然豊かな土地で新鮮なものを食べた時とで、味わいが全然違いますよね。
きゅうりは他の野菜よりも素材そのものの味がダイレクトに感じられる気がするから、なおさらおいしいものと普通のものの差が開きそうです。今度から有機栽培されたような、ちょっと高級なきゅうりを選んで買ってみるようにします。そうすればきっと家飲みでも感動を味わえそうな気がします。
そうだ、大阪の森ノ宮という街に「酒の穴」という屋号の居酒屋があり、パリッコさんと私のユニット名と同じ名前なので、気になって入ってみたんです。何を食べても安くておいしい、いい居酒屋だったんですが、そこに「麦カッパ」という、麦焼酎の水割りにきゅうりを浮かべた飲み物があって、妙においしかった。「カッパ割り」みたいな名で結構あちこちの居酒屋で見かける気がするんですが、そこのは格別でした! 今度行きましょう!
次回のテーマは「新鮮な食材で飲む」でどうでしょう!
スズキナオ:東京生まれ、大阪在住のフリーライター。著書に「遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ」「『それから』の大阪」他。「家から5分の旅館に泊まる」が絶賛発売中。
配信: アサジョ
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