社員が「適応障害」になったとき企業が取るべき対応や復帰のサポート【専門医解説】

社員が「適応障害」になったとき企業が取るべき対応や復帰のサポート【専門医解説】

自分の置かれた環境にうまく馴染めず、出社拒否などに至ることもある適応障害。そんな社員に対し、企業はどのようなサポートができるのでしょうか? 職場の対応や復帰のサポートについて、ペディ汐留こころとからだのクリニックの岩谷先生に教えてもらいました。

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監修医師:
岩谷泰志(ペディ汐留こころとからだクリニック)

筑波大学医学専門学群卒業後、京都大学病院麻酔科で研修を2年間行う。その後、東京慈恵医科大学精神医学講座に入局し、東京慈恵医科大学付属病院の平川病院を含む関連病院にて精神科医として勤務。2003年に「いわたにクリニック」を開業。2022年には「ペディ汐留こころとからだクリニック」院長に就任。

適応障害とは?

編集部

適応障害とはどのような病気ですか?

岩谷先生

確認できるストレス要因に反応して、3ヶ月以内に情動面または行動面で症状が出現する疾患のことを、適応障害といいます。

編集部

もう少し具体的に教えてください。

岩谷先生

企業における適応障害として多く見られるのは、異動や転勤など、新しい環境になったとき、その状況や出来事にうまく慣れることができず、さまざまな精神症状を引き起こすというものです。リーダー的立場になるなど、責任ある仕事を任された途端に行き詰ってしまう、あるいは「自分は周りよりも能力が劣っているのではないか」ということばかり気にしてしまう、自己肯定感が持てない、というのもよくあるケースです。

編集部

どのような症状が見られるのですか?

岩谷先生

症状はさまざまで、抑うつ、不安、無気力、思考力や集中力の欠如、絶望感、イライラなどが見られることがあります。身体症状としては、全身倦怠感や不眠、動悸、めまい、頭痛などが見られることがあります。

編集部

放置するとどうなるのですか?

岩谷先生

症状を放置するとうつ病や不安障害などの症状が見られたり、攻撃的な行動になって周りに影響を与えたりすることがあります。そのため、おかしいなと感じたら早めに受診することが必要です。

編集部

どんな症状が見られたら受診したら良いのでしょうか?

岩谷先生

先述のような抑うつ、不眠などの精神症状や全身倦怠感、不眠、動悸などの身体症状が2週間程度続いたら受診することをお勧めします。

適応障害の社員への対応

編集部

適応障害と診断されたら、会社へ伝えるべきでしょうか?

岩谷先生

適応障害がひどくなると会社へ行けなくなるなど、仕事にも支障が及んできます。そのため、適応障害と診断され、仕事に支障が及び始めたら医師に診断書を作成してもらって会社へ報告しましょう。その後、上司などと相談し、何らかの配慮をしてもらえないか相談してみましょう。

編集部

一方、企業側は適応障害の社員に対し、どのように対処すれば良いでしょうか?

岩谷先生

当該社員の仕事のパフォーマンスが低下し、医師により適応障害と診断された場合には、仕事を休ませる必要があるか検討します。企業により休職制度は異なるため、就業規則に応じて休職の手続きを進めます。休職期間は症状にもよりますが、約2~3ヶ月とされています。

編集部

当該社員の休職中、企業は何をすべきでしょうか?

岩谷先生

その社員が休職した場合は、「病気休業開始及び休業中のケア」「主治医による職場復帰可能の判断」「職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成」「最終的な職場復帰の決定」「職場復帰」という5つのステップを行うよう、厚生労働省より定められています。これに沿って休職中の社員をサポートすることが必要です。

編集部

ステップが定められているのですね。

岩谷先生

はい。たとえば第1ステップの「病気休業開始及び休業中のケア」では、社員が安心して療養に専念できるよう、傷病手当金などの経済的な保障や不安・悩みの相談先の紹介を行ったり、公的または民間の職場復帰支援サービスを紹介したりすることが必要です。

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