高山病の前兆や初期症状について
高山病は「山酔い」「高地肺水腫」「高地脳浮腫」の3段階に重症度が分けられています。
標高2000m以上の高所で、食欲低下や嘔吐、疲労感や倦怠感、立ち眩みやめまい、息苦しさや睡眠障害のうちいずれか1つでも該当すれば、山酔いの段階だと判断します。山酔いの段階から命の危険は伴うため、早めに下山して症状の改善に努める必要があります。
より重篤な場合は、高地脳浮腫や高地肺水腫を生じることがあります。高地肺水腫は、肺に水が溜まる病気です。初期症状としては、乾いた咳や動作時の息切れが見られます。中程度になると安静時でも息切れを起こすようになり、チアノーゼも見られます。さらに悪化すると、血痰や呼吸困難が起こるようになります。
高地脳浮腫は、脳に浮腫が生じることで脳を圧迫し、死に至ることもある病気です。高地脳浮腫は錯乱や運動失調が起こり、早い段階で適切な対処を行わなかった場合、昏睡状態に陥ります。
高山病の評価基準として「レイクルイーズスコア(高山病の経過判定表)」があり、現場での高山病かどうかを見極める判断材料になります。
下記の「本人評価」で合計点数が3点以上の場合、高山病が疑われ、登山の継続は危険だと判断します。そのうえで高地に滞在している間は「他者評価」を毎日チェックし点数が増えている場合は危険度が増していると判断できます。
「本人評価」
頭痛
0…まったく無い
1…軽度
2…中程度
3…激しい頭痛
胃腸症状
0…食欲良好
1…食欲がない
2…非常に嘔気がある、嘔吐
3…耐えられない嘔気と嘔吐
疲労・脱力
0…まったく無い
1…少し感じる
2…非常に感じる
3…耐えられないほど感じる
めまい・ふらつき
0…まったく無い
1…少し感じる
2…非常に感じる
3…耐えられないほど感じる
「他者評価」
精神状態
0…正常
1…ぼやっとしている、疲れている
2…場所や時間が分からない
3…ほとんど反応がない
運動失調
0…正常
1…両手を広げて歩ける
2…まっすぐ歩けない
3…転ぶ
4…立ち上がれない
浮腫
0…なし
1…1カ所
2…2カ所
(参考:National Library of Medicine「The 2018 Lake Louise Acute Mountain Sickness Score」を基に作成)
高山病の検査・診断
高山病は、発症の状況と症状で診断されます。高所に数時間~数日間滞在し、先に挙げた典型的な症状(頭痛、嘔吐、食欲の低下、倦怠感、めまいやふらつきなど)が見られた場合は高山病が疑われます。
下痢や運動麻痺など、高山病の典型的症状に該当しない場合は、他の病気を視野に入れて検査・診断する必要があります。
高地肺水腫の場合は、聴診器を肺の部分にあてると「ぶつぶつ」という水泡音が聴かれます。診断を確定するために、胸部X線検査や血中酸素の測定を行う場合があります。
配信: Medical DOC