成人T細胞白血病(ATL)は、ウイルス感染が原因で発症する可能性がある稀ながんの一種です。ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)によって引き起こされることが多く、特に日本などの一部地域で見られます。
本記事では成人T細胞白血病の原因について以下の点を中心にご紹介します。
・成人T細胞白血病とは
・成人T細胞白血病の原因
・成人T細胞白血病の治療法
成人T細胞白血病について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
≫「成人T細胞白血病」の初期症状・九州地方に多い理由はご存知ですか?医師が解説!
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
成人T細胞白血病とは
成人T細胞白血病(ATL)は、ヒトT細胞白血病ウイルスⅠ型(HTLV-1)の感染が原因で免疫を司るT細胞ががん化し、異常に増殖する血液の病気です。発症するにはHTLV-1に感染していることが必要ですが、感染してもすべてが成人T細胞白血病に進展するわけではありません。ATLは急性型から慢性型まで複数の病型があり、症状や治療法も異なります。日本では九州や沖縄地域での感染が多く、母乳や性交渉を通じて感染が広がることが主な感染経路とされています。
成人T細胞白血病の種類
成人T細胞白血病にはどのような種類があるのでしょうか?
急性型
急性型は、血液中に花びらの形をした異常な核を持つリンパ球が急速に増える特徴があります。リンパ節の腫れや皮疹、肝臓や脾臓の腫大が見られます。消化管や肺にも異常リンパ球が浸潤する場合があります。病気の進行により、感染症や血液中のカルシウム値の上昇が合併することもあります。このような状況では、早急な抗がん剤治療が必要とされます。
リンパ腫型
リンパ腫型は、悪性化したリンパ球が主にリンパ節で増える病型です。血液中に異常細胞は認められませんが、リンパ節の腫れが主な症状として現れます。急性型と同様に症状が急速に進行することがあり、早期の診断と抗がん剤による治療が重要です。治療の選択肢には、病気の進行度や患者さんの状態に応じた化学療法やほかの治療法があります。定期的な検査と治療計画の立案が、治療の成否に大きく影響します。
慢性型
慢性型は、血液中の白血球数が増加し、異常リンパ球が多数見られる病型ですが、増殖は遅く、症状がほとんど現れません。無治療で経過を観察することが多いようです。病気の進行が遅いため、治療の必要性がない場合もありますが、定期的な検査や医師のフォローアップが重要です。進行が速い急性型やリンパ腫型とは異なり、慢性型の場合は病状の進行が緩やかであるため、治療計画は個々の患者さんの状態に応じて慎重に検討されます。
くすぶり型
くすぶり型は、白血球数は正常の範囲内でありながら血液中に異常リンパ球が存在する病型です。皮疹を伴うことがあり、ほかの病型とは異なる特徴を示します。くすぶり型の患者さんでは、病状が安定しており、無治療で長期間経過観察されます。数ヵ月に1回程度の外来受診で医師による経過の評価が行われ、必要に応じて治療計画が調整されることもあります。治療の必要性やタイミングは個別の患者さんの状態に基づいて判断され、患者さんの生活の質を損なわないよう配慮されます。
急性転化型
急性転化型は、慢性型やくすぶり型から急性型やリンパ腫型へ病状が進行する現象を指します。安定していた病態が急速に悪化し、治療が効果を示さなくなることがあります。急性転化が起こるメカニズムや具体的な進行速度については、まだ解明されていない部分もありますが、慢性型では2〜5年程度、くすぶり型ではそれ以上の期間が経過してからの急性転化が見られることが多いとされています。急性転化は、患者さんの病状の進行度合いや個別の生物学的特性によって異なり、治療計画の見直しが急務となります。医師は、早期に適切な抗がん剤治療を開始することで、病気の進行を抑える努力を行います。
配信: Medical DOC