成人T細胞白血病の治療法
成人T細胞白血病リンパ腫の治療法には、主に化学療法と造血幹細胞移植が用いられます。
化学療法
成人T細胞白血病リンパ腫の治療法として、主に化学療法が用いられます。非ホジキンリンパ腫に有効な複数の抗がん剤を組み合わせた多剤併用化学療法が用いられています。例えば、ビンクリスチン、エンドキサン、アドリアマイシン、メソトレキセート、エトポシドなどが使われ、これらの抗がん剤の併用によって、全体の30〜70%の患者さんで寛解が得られることがあります。
ただし、再発や再燃のリスクが高く、治癒が難しい現実もあります。近年では、モガムリズマブ(商品名:ポテリジオ)などの分子標的薬も、化学療法に組み入れられることがあり、がん細胞のより精確な標的化が可能とされています。しかし、治癒に至る例はまだ少なく、病型や患者さんの状態によって適切な治療法が選択されます。
造血幹細胞移植
成人T細胞白血病リンパ腫の治療法として期待されるのが造血幹細胞移植です。患者さんの体内にドナーから提供された正常な造血幹細胞を移植することで、新たな造血機能を再建するものです。自家移植、同種移植、同系移植という方法があり、同種移植ではHLA型の一致したドナーからの造血幹細胞が使用されます。
近年では、薬剤の強度を落とした試みも行われ、年齢や全身状態に応じた選択肢も増えています。ただし、この治療は体への負担が大きく、前処置の程度や移植後の管理が重要な課題です。
成人T細胞白血病についてよくある質問
ここまで成人T細胞白血病を紹介しました。ここでは成人T細胞白血病についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
成人T細胞白血病はどのように感染しますか?
中路 幸之助(医師)
主な感染経路は、性行為と母子感染です。性行為では、感染者の性液が健康な相手にウイルスを伝播することが主な原因とされています。また、母子感染は主に母乳を通じて行われますが、最近では経胎盤感染の可能性も指摘されています。過去には輸血による感染も問題視されましたが、現在では献血者の抗HTLV-1抗体検査によってほぼ100%の防止が確保されています。
性別による感染率の差や感染のメカニズムについては、さらなる研究が進められていますが、性行為を通じた感染が多いようです。
成人T細胞白血病の予防方法はありますか?
中路 幸之助(医師)
成人T細胞白血病(ATL)や、ほかのHTLV-1関連疾患(HAM、HU/HAU)の特効薬や予防接種は存在しません。HTLV-1の主な感染経路は母子感染や性行為による水平感染であり、母乳を介した感染が重要視されています。母子感染を防ぐためには、妊娠中の定期的な検査や母乳の代替措置が推奨されていますが、予防は難しいのが現実です。
また、ATLの発症リスクに関連して、禁煙でリスクを軽減できる可能性があります。しかし、現時点の明確な予防策は、感染のリスクを避けることや、健康な生活習慣の維持が重要です。今後の研究がさらに進展し、より効果的な予防法が見つかることが期待されています。
配信: Medical DOC