ジェンダーレスな時代とビッグシルエットブームが相まって、メンズを着る女性が増えています。オトナミューズでもずっと提案してきましたが、最近の【365日スナップ】を見ているとさらに増えている印象なんですよね。
じつは筆者もメンズ服愛用者で、もしかしたらワードローブの半分を占めているかも。その理由は、メンズファッションに長く携わっていることもありますが(メンズ媒体出身というか、今も執筆しています!)、きっとレディスにはないデザインが大好物なんだと思います。加えて、生地や縫製、細かなディテールなどのこだわりがハンパないところも◎。だからメンズ服は一目惚れというより、納得して購入することがほとんどなんですよね。そして気がつくと、シーズンを超えて長く愛用している。もちろんレディスでも長く愛用しているアイテムはありますが、筆者の場合はメンズのほうが多いかも。
さらにメンズ特有のデザインは、着こなしの鮮度アップにも有効ですし、スタイリングの幅も広がること請け合い! というわけで、今回は筆者が独断でピックアップした、女性におすすめのメンズブランドをご紹介します。すでにメンズ服を愛用している人もそうでない人も、ぜひチェックしてみてください!
ベルリン生まれの女性デザイナーが手がける珠玉のメンズ服【ポリプロイド】
2017年にドイツ・ベルリンで誕生した【ポリプロイド】。ブランド名は化学用語で「多倍数体」という意味を持ち、”There are no facts, only interpretations”をコンセプトにしています。厳密にいうとユニセックスブランドですが、女性にはあまり知られていないので今回ピックアップしました。
一番の特徴は、他とは一線を画す実験的なアプローチで提案していること。ひとつのアイテムに対して3種類の異なる素材と色で展開していて、コレクションはA・B・Cという3つのカテゴリーで構成されています。Aはデザインのアウトラインを強調するため、テーラードの仮縫い(トワル)から着想を得て、オフホワイトのみで製作。BとCでは全く違う生地が使われ、カラーバリエーションはBは2色、Cは3色となっているのです。他のブランドとは一線を画す面白い取り組みですよね。
デザイナーのイゾルテ・オーギュスト・リッチリー氏はメンズでキャリアを積んでいるだけに、細部もとことんこだわって作られているのもグッド(展示会で何度かお会いしましたが、とってもキュートで素敵な女性でした!)。それでいて落ち感の美しい生地を使用するなど、アイテムによってはほんのり女性らしさも感じる部分もあって、そのバランスが絶妙なんです。女性からの人気に火がつくのも時間の問題かも! と思っています。
女性におすすめのアイテムはこちら!
ジャンプスーツ¥88,000
【ポリプロイド】でピックしたのは、筆者がリアルバイしたジャンプスーツです。こちらはブランド初のアイテムで、オフホワイトのナチュラルコットンに加え、ピンストライプのウールトロピカル、ムラ染めしたナイロンオックスで展開。
筆者はピンストライプをチョイスしたのですが、これがかなりイイ! シルエットはリラックス感があるゆったりめですが、共地のベルトでキュッと結ぶと女性らしいメリハリをつけられるんです。ウールトロピカルの品のある風合いも絶妙。カジュアルなジャンプスーツの格上げさせるのにもひと役買ってくれますし、少しハリのある生地感なのでシワになりにくいというのもうれしいポイントです!
スニーカーからヒールまでマッチしますし、トップを脱いで腰巻きにしてもOK。意外と着まわし力も高いので、買って損ナシの1着だと思います!
メンズならではの繊細な意匠に注目! 【ユーゲン】の長く愛用したくなる美しい服
服に一家言を持つ大人の男性から支持されている【ユーゲン】は、2019年秋冬より始動している日本発のブランドです。ブランド名は芸術における日本文化の理念のひとつである「幽玄」に由来し、日本人ならではの”奥深くて、はかり知れない美”を追求。さらにシンプルで上質、そしてシーズンを超えて愛される”長く着たいと思える服”を発信しています。
デザイナーの小山雅人氏は、人気セレクトショップのチーフデザイナーとしてオリジナルの企画やデザインなどを手がけてきた人物。それゆえに細部へのこだわりは相当なもので、そこかしこに繊細な意匠が散りばめられています。また、【ユーゲン】のインスピレーションの源になっているのは、ヨーロッパやアメリカのクラシックウェアやミリタリーウェアといった古きよきアイテムたち。それらをベースに現代的な要素をプラスすることで、派手さはないものの独特な空気感をまとうコレクションに仕上がっています。
実際に手に取って着用してみると、こだわりを持って細部まで丁寧に作られていることがすぐにわかるはずです。それが服に一家言を持つ大人の男性に支持される理由なのかも、とも思いました。また、展示会ではレディスのバイヤーさんも多く見かけたので、ファッション好きの女性にもきっと刺さるはず!
女性におすすめのアイテムはこちら!
「 Cecil」のシャツ¥63,800
このバンドカラーシャツは、1950年ごろのヴィンテージのフォーマルシャツにインスピレーションを受けたもの。フロントに入れられた太めのプリーツとボタンが見えない比翼仕立てに加え、背ヨークにはギャザーを施すなど、全方位でエレガントで美しい雰囲気を演出できます。
肩幅や身幅はほどよいリラックス感があり、ジャストルーズなシルエットを実現。裾のカットはストレート気味になっているので、タックアウトした際もその美しいシルエットをキープできるのもポイントです。それによって女性はヒップがすっぽり隠れる長めの丈感ながら、すっきりバランスよく着こなせるようになっています。
加えて、このシャツには【ユーゲン】らしい仕掛けが盛り込まれています。それは第一ボタンを省いていること。これは1940年代のイギリス軍のシャツに見られたディテールで、そのまま着用してもいいですし、別売りのデタッチャブルカラーでクレリックシャツにすることもできるんです。ちなみに先日公開したメンズスナップでは、MIYAMOTO SPICE代表の宮本哲明さんによるデタッチャブルカラーの金具を使ったアレンジを紹介しているので、ぜひチェックしてみてください!
デタッチャブルカラー各¥7,700
クラシックと現代の空気感を見事に融合した【ヒューベント】の不変的な服は必見!
「Classic:不変の美しさ」「Inflection:上質と遊び心」「Function:快適な日常」をコンセプトに掲げ、2022年に立ち上げられた【ヒューベント】。”海”と”労働者”の服をブランドの根幹に、上質で大人の遊び心も感じるコレクションを展開しています。
ブランド名は「人=HUMAN」と、生命が誕生した深海の「熱水噴出孔=VENT」を組み合わせた造語。さまざまな偶然の積み重ねで生命が誕生したという神秘性は、ファッションにも通じるものがあるにも関わらず、いつの間にか私たちはないがしろにしている。だからこそ今本当に必要なものを再考し、あえてシーズンテーマを設けずに長く愛用してもらえる不変的な服を作っていきたい、と考えているそう。
古着にインスパイアを受けているのも特徴で、【ヒューベント】のコレクションは古着が持つ不変性や魅力も存分に表現されています。それでいて今の時代を反映したディテールや機能を盛り込んでいるのも面白いところ。また、重量感のあるクラシックなメルトン生地をあえて使用したり、快適性を重視する現代とは逆行するかのような生地使いも、筆者的にはツボでした(少しメンズ寄りの考えかもしれませんが……)。
女性におすすめのアイテムはこちら!
ソリスキャバリートラウザー¥52,800
筆者が【ヒューベント】に興味を持ったきっかけが、ビームス安武俊宏さんの私服スナップ。その際にはいていたのがこのパンツで、シルエットとか生地感とかがすごく好みだったんです。このパンツが刺さる女性もきっと多いはず! と思って、今回ピックアップさせていただきました。
注目すべきは生地で、これは騎兵隊員(キャバリー)の制服として使われたことに由来するオリジナルの「キャバリーツイル」が使われています。耐久性や強度が抜群に高いしっかりとした生地感ながら、適度なしなやかさも兼備。シワにもなりにくいので、いつでもビシッとはきこなせるのがイイんです!
サイドに切り替えがないシームレス仕様になっているのもポイントで、それによってすっきりとした美シルエットを描いてくれます。ウエスマン(ウエスト部分)のボタンはサスペンダー用で、こちらもクラシックなパンツに見られるディテールのひとつ。ヴィンテージのイギリス軍のサスペンダーに着想を得た、オリジナルのサスペンダー(別売り¥12,100)とのスタイリングもおすすめです。
ファッションって楽しい♡を体現した自由な発想が魅力の【セブンバイセブン】
2023年に開催された2024S/S 楽天ファッション・東京ウィークで、ブランド初のランウェイショーを行って話題を集めた【セブンバイセブン】。残念ながら筆者は伺えずに画像での拝見になってしまいましたが、ファッションは自由だ! ということを改めて想起させ、久しぶりにワクワクしたのを昨日のように覚えています。
デザイナー川上淳也氏の服づくりの原点は、90年代後半から足繁く通って買い付けを行なっていたサンフランシスコのヴィンテージ。アーカイブに着想を得ていながらもディテールをアレンジしたり、その先にある新たな可能性や価値を見つけ出したり。既存の枠にとらわれることなく、ヴィンテージへの豊富な知識と経験、そして独自の感性によってブランドの世界観が自由に表現されています。
なかでも気になったのは、デザイナー自ら産地をまわって見つけ出しているという素材。他とはひと味違う個性を生み出す日本のデッドストック生地やカシミール地方をパシュミナの生地は、2024年AWのコレクションでひときわ目をひきました。また、古着をパーツごとに解体し、素材や生地としてとらえて再構築したシリーズ「リワーク」も要チェックです!
ファッションジャーナリストのYouTubeで紹介されて、女性人気も高まっているという【セブンバイセブン】。取り入れることでセンスの幅もさらに広げられるはず!
女性におすすめのアイテムはこちら!
ジップアップベルベッドブルゾン¥121,000
男っぽく武骨なアイテムも豊富な【セブンバイセブン】ですが、今回はベルベッドのブルゾンをセレクト。レーヨンとシルクの混紡素材を使用しており、その独特な光沢感はスタイリングの格上げ効果も期待できます。生地の落ち感も美しいので、女性が着用してもすっきり着こなせるというのもポイント。
さらに京都の数少ない吊り染めの染め屋で行なったという、こだわりの染めにも注目。このブルゾンは素材ごとに染色する「2浴染め」が採用されており、単色使いながら色に奥行きを持たせることができ、より印象的な着こなしへと導けるのです。
現代的なシルエットながらもどこか80年代の野暮ったさもあるので、あえてフェミニンなドレスやスカートのハズしとして取り入れても面白そう!
Gジャンもトラックパンツも全部ニット素材! ニットの可能性が広がる【メイアス】
ニットエンジニアたちが2018年にスタートさせた【メイアス】は、日本発のニットブランド。長きにわたってセレクトショップやブランドなどのOEMを請け負ってきた実績があるだけに、そのクオリティはお墨付き! さらに、これまで培ってきた素材開発や編みの技術などを惜しみなく注入し、一本一本の糸と向き合って緻密な計算のもと生まれた、完成度の高いニットウェアは大人の女性も必見です。
シンプルなデザインやカラフルなニットに加え、他のニットブランドでは見かけないユニークなモデルを展開しているのも【メイアス】ならでは。たとえば、【Lee】の「ウエスターナー」や【ディッキーズ】の「874」をニットで表現していたり、ライン入りのスポーティなトラックパンツをニットで品よく仕上げていたり。作り手の遊び心とこだわりが存分に堪能できるラインナップも見どころになっています。
ニットと真摯に向き合い、追求し続けている【メイアス】。その本気の仕事ぶりに大のニット好きの筆者は胸がトキメキました! デザインもクオリティも妥協せず、まわりと差がつく1枚をチョイスしたい! という女性におすすめしたいブランドです。
女性におすすめのアイテムはこちら!
フェアアイルハーフジップポロ各¥42,900
スコットランド・シェトランド諸島が発祥で、キャサリン妃をはじめとする英国王室からも愛されるフェアアイルニット。カラフルな色使いの幾何学柄が特徴ですが、意外とスタイリングが難しく、カラーリングによってはほっこり見えてしまうことも。
その点、【メイアス】は編みの裏面をあえて表に採用することで、ほっこり系とは一線を画すこなれた雰囲気を実現。カラーリングのセンスもさすがで、これならジーンズとの合わせもスタイリッシュに仕上がりそう。
ハーフジップはやや深めに設定されているので、襟元の表情付けが自由自在なのも◎。筆者はクルーネックの白Tとレイヤードして、すっきり着こなしたいな、と思いました。
女性には意外と知られていないブランドばかりかもしれませんが、取り入れることでまわりとも差がつけられるはずです。この機会にぜひチェックしてみてくださいね!
text:KYOKO CHIKAMA
配信: オトナミューズウェブ
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