イトーヨーカ堂の冷凍食品の販売は堅調に推移している。その中で、付加価値を高めたものから、値ごろな商品まで広く支持され、季節感のある売り場づくりに取り組むなど新たな施策も見られる。デイリー食品部マーチャンダイザーの会田奉文氏に聞いた。
会田奉文氏
――2024年3~8月における販売動向は。
当社の冷凍食品の売上高は、前年同期比で1%増と堅調に推移した。セブンプレミアムなどのプライベートブランド(PB)の品ぞろえや、新商品の開発に力を入れ、着実に伸ばせている。一方、数量ベースでは2%減となった。各社の価格改定による影響などで冷食市場全体が落ち込んでおり、なかなか前年並みに到達しないのが現状だ。
その中で、数量を増やすべく実施したまとめ買いキャンペーンは、売上が通常時の2~3倍に伸びた。品質を高めた商品も堅調な動きを見せている。
――好調だったカテゴリーは。
全体としては概ね好調で、とりわけ冷凍野菜では、生鮮の価格高騰によりブロッコリーが伸びた。また、7月から8月にかけて冷凍果実が3~4割ほど伸長した。韓国スイーツのタンフルのように、冷凍果実を氷水に入れて凍らせる食べ方がSNSで話題になり、マンゴーは品薄になることもあった。
ワンプレート商品も前年比で約3割増と好調に推移している。シニア層や主婦層を中心に、コロナ禍を機に冷凍食品を使い始めたお客様から支持を得られている。高単価の商品だが、機内食のワンプレートなども並べてみると動きは良かった。レンジアップで即食性の高い商品の需要を感じている。
――PBの取り組みは。
「EASE UP(イーズアップ)」は一食完結をコンセプトとしていることもあり、非常に伸びている。通常品と飲食店監修品の売上は半々くらいだった。スープごはん類が女性を中心に支持されている。韓国伝統料理ハヌリ監修の「プルコギキンパ」や「参鶏湯(サムゲタン)」などが順調に推移し、定番品の「カルビクッパ」といった韓国料理が支持されている。
「セブンプレミアム」は「ナショナルブランド(NB)よりも2割安く、かつ品質・味は同等」をコンセプトに開発を進めている。他社にはないものを展開することで差別化を図り、来店動機につなげている。
この秋からは、冷凍食品売場に足りていない季節性を演出するため、紫色のパッケージとさつまいものような見た目で秋を感じられるようにした「今川焼安納芋あん 4個入」の展開を積極的に進めている。今後も季節を感じられるような商品も打ち出し、お客様が売場に足を運ぶ動機につなげたいと思う。
「セブンプレミアムゴールド」シリーズは、「ピッツェリア・エ・トラットリア・ダ・イーサ」の山本尚徳シェフ監修の「金のマルゲリータ」を筆頭に好調に推移している。秋冬には新商品の発売も予定しているほか、新たなカテゴリーの商品も来期に向けて準備を進めている。
経済性を訴求したブランドとしては「セブン・ザ・プライス」がある。大容量サイズでコスパが良い商品をコンセプトに、冷食では8アイテムを展開している。メディア露出などで認知拡大を図りながら、ラインナップの拡充を予定している。
〈季節感ある売り場などで訴求さまざまな冷食を提案〉
――NBで注目している新商品は。
ニチレイフーズの「本当に旨い担々麺」は、試食したところ完成度の高さに驚いた。実際に売り出してみても、消費者の反応が良い。
日清食品冷凍の「日清本麺」シリーズは、値ごろな価格に刷新したことでより手に取ってもらいやすくなるのでは。
おかず類ではマルハニチロ「赤坂離宮の五目シュウマイ」に期待している。「赤坂離宮の餃子」については、8月に中華フェアを実施した際に販促を入れさせてもらったところ、非常に動きは良かった。グレードの高い中華惣菜として支持されているのでは。
――今後の取り組みは。お客様にどう売場の魅力をいかに伝えていくかが大事だと思う。
10年以上前の話だが、チーズのバイヤーをしていた時、カマンベールチーズを食べたことのある人は統計上で2割から3割程度だった。誰もが知っていると思っても。実際に食べたことのある人はその程度しかいなかった。
冷凍食品も同じで、冷凍食品の魅力を伝えていかなくてはならないと思っている。季節感のある売り場づくりもそのための取り組みの一つ。
間口を広げて行くために、日常使いできる弁当商材やワンプレート商品に加えて、少し贅沢したいという気持ちに応えた商品も並べるなど、日常生活に本当に冷凍食品を使っていただける商品なのかを考えて品ぞろえをしなくてはと思っている。消費の二極化を意識し、「セブン・ザ・プライス」のように値ごろなものから、「セブンプレミアムゴールド」のように付加価値のあるものまでしっかりと訴求していく。
〈冷食日報2024年9月26日付〉
配信: 食品産業新聞社ニュースWEB