子育てではほめることが大切、とよく言われます。しかし実際に子育てをしていると、「ほめる」よりも「叱る」が優位に立ってしまい、一体いつほめたらいいの? と迷ってしまうことも多いかもしれませんね。今回は、子どもをいつほめたらいいのか? という問題に焦点を当ててみましょう。子どもをほめるべきタイミング、ほめる基準などを確認してみましょう。
「できた」と「ほめる」はどちらが先?
何かができたとき、何かが成功したときにほめるのか? どうほめるべきか? ということは、親にとって悩ましい問題です。ほめる子育てが大切といわれる一方で、子どもが何か大きなことを成し遂げるケースは稀で、むしろ子育ては日々「指示どおりできない」「この前教えたばかりなのに忘れている」といったことの連続でしょう。ですから、何かが「できた」の瞬間を待っていると、なかなかほめるチャンスがやってこない…と考えている方はたくさんいると思います。
結論を言うと、「できた」と「ほめる」では、「ほめる」を先行させるのがおすすめです。まずは「何かができなければ、ほめてはいけない」という考え方から抜け出してみるといいですね。しかし、次のような考え方もあります。
「できたから、ほめる」も間違いではない
子どもが何かをできたから、ほめる。という考え方は、決して間違いではありません。ポイントは、「できた」のハードルを高くしないことです。例えば、コップにジュースを注ぐ場面を想像してみましょう。子どもがコップとジュースを持ってきて、テーブルで注いだらうまくいかずにこぼれてしまった場合、忙しいとつい叱ってしまうかもしれませんね。
しかしここは、コップやジュースを自分で持ってこられたことや、自分で注ぐことにチャレンジしたことを、ほめるチャンスです!コップにジュースをこぼさずに注ぐことは、確かにできなかったのかもしれません。でも、チャレンジすること自体は「できた」のです。自分でチャレンジしたことをほめてもらえると、子どもは、「次またチャレンジしよう」「最後まで成功するように気をつけよう」と思えます。
小さなことでほめると、大きな「できた」につながりやすい
ジュースの例に挙げたように、「コップにジュースが上手に注げた」といったような大きな「できた」を待たずに、小さなことで子どもをほめておくと、子どもはどんどんやる気を出すため、チャレンジする気持ちが生まれ、そして成功につながりやすくなります。反対に、ジュースをこぼしたことで怒ったり、せっかく挑戦したのに「ほら、こんなことするから…」「もっと注意しなさい!」といった小言で表現してしまうと、失敗しないようにと子どものやる気はしぼんでしまいます。
やる気が出る→チャレンジが増える→「できた!」が増える
「できた」という経験は自信や、やる気につながるものですが、これを増やしていくためには、まずはチャレンジの数や頻度を増やすことが大切です。チャレンジができると、「できた」が増えて→やる気が出て→さらにチャレンジを続けられるという好循環が生まれるでしょう。
親のほめ言葉は、チャレンジを増やす栄養剤のようなものです。これでいいんだ!と思えることで、子どもは、失敗を恐れず挑戦し、挑戦のなかから成功や自信をつかんでいきます。
見つけたらほめるチャンス!子どもをほめるおすすめのタイミングとワード
子どものこんなシーンを見つけたら、ほめるチャンスです。日常のなかでぜひ探したい「ほめるタイミング」を、おすすめのワードとともにご紹介します。
朝、目が覚めた
朝、起きるということ。こんなに当たり前のことはないかもしれません。大人も毎日やっているし、わざわざほめるようなことじゃない、というのが通常の意見かと思います。でも、毎日朝決まった時間に起きるのは意外と大変です。小学生の夏休みに、急に朝早く起きるのがしんどくなったりもした経験はありませんか?それが継続すると「朝は起きられない」というネガティブな思い込みにつながることもあるでしょう。
朝、着替えなどが完璧にできていなくても「自分で起きられたね!やったね!」などと声をかけることは、朝起きられる自信やポジティブな生活習慣につながっていきます。何より、朝一番でほめてもらえるということが、子どもの心をぱっと明るくするのです。
身支度やお手伝いに手を付ける
身支度やお手伝いは、「できたからほめる」の代表格のようなもの。もちろん、やり終わってからほめるのも良いですが、やり始めた時点ですでに、ほめるポイントを見つける時間が始まっています。
「あっ、自分でやっているの? すごいじゃん」「ていねいにやってくれているね! ありがとう!」という言葉も、立派なほめ言葉なのです。お手伝いが終わったときは「やってもらって助かったよ」「またやってね」という言い方で、再度ほめることもできますよ。
絵を描いている、作品を作っている
注意したいのは「上手に絵を描けた」ではない、ということです。また、完成した時だけが、ほめるタイミングではないのは、お手伝いと同じです。例えばお絵かきなら、描いているのを見つけたら少し観察し、「山がきれいな形をしているね!」「おいしそうなりんごだね!」と声をかけられます。絵の内容について「黄色があざやかだね! これは何をしているところ?」などと聞くのも、子どもにとってはほめられているのと同じ。「どんな絵ができるのかな? 楽しみだな!」「できたら、また見せてね」といったようなほめ方もできます。
園生や小学校低学年の場合、絵や作品をほめるチャンスがたくさんあります。反対に、ここを見逃してしまうと、ほめるチャンスは大きく減ってしまうかも。「すごーい」「天才!」で済ませないほめ方を実践したい分野です。
ワークや勉強をしている
ワークや勉強をしているときは、お絵かきや作品づくりと似ています。特に小学生になると、勉強はやって当たり前という側面が強くなり、「宿題をやったからといってわざわざほめない」というご家庭も増えてきますが、面倒がらずに声かけをしたいものです。
ほめ方はとてもシンプル。ワークや勉強に向かっているのを見つけたら、「頑張っているね」「お疲れ様!」と声をかけるだけです。子どもたちは、勉強がよくできる自分をほめてほしい、とももちろん思いますが、結果以上に「自分の頑張りを認めてほしい」と感じるものです。したがって、ワークや勉強が「できた」のタイミングも大切ですが、「今、頑張っている」のタイミングも、ほめるタイミングといえます。
「できた」未満こそ、ほめるポイントに!
ほめる教育方法については、昨今、疑問の声も多くきかれるようになってきました。何でもほめておだてるのは、確かに、虫歯を招く砂糖菓子のようなものかもしれません。私たちの体には、砂糖菓子でなく毎日のバランスの良い栄養が必要なように、心にもバランスの良い言葉で接したいものです。
でも、子どもってわんぱくで、言うこともきかないし、一体どこをほめたらいいの…? と思うときこそ、まだ「できた」に至らないプロセスにある、小さいことに注目してみてください。「頑張れた」は、それ自体が一つの「できた」ことでもあるのだと思います。
配信: あんふぁんWeb