筋強直性ジストロフィーの前兆や初期症状について
筋強直性ジストロフィーは進行性の筋力低下が特徴です。初期症状でみられやすい筋力低下は以下に挙げられる部位や動作が挙げられます。これらの症状は徐々に進行し、筋萎縮や筋硬直に移行します。
前腕・手指:物を握りにくい、指を握ったり開いたりがスムーズにできない
足・足首:つま先が上がらない、段差につまづきやすい
首:寝返りなどで首を持ち上げにくい
そのほか前兆となりうる多臓器疾患は以下に挙げられるものがあります。筋力低下の症状がみられず、白内障のみみられるケースもあります。
臓器
症状
骨格筋
筋強直現象、頭部・手足の進行性筋萎縮
心臓
心伝導障害、不整脈、心筋症
呼吸器
肺胞低換気(拘束性障害)、呼吸調整障害(睡眠時無呼吸障害、中枢性換気障害)
中枢神経系
無気力・無関心、認知機能障害、日中過眠、白質病変、精神発達遅滞、学習障害、注意欠陥・多動障害
内分泌系・代謝系
耐糖能障害、高インスリン血症、高脂血症、甲状腺機能障害、性腺ホルモン異常、不妊
消化管
嚥下障害、便秘、イレウス、巨大結腸、胆石
眼
白内障、網膜色素変性症、眼球運動障害
耳
感音性難聴
骨格系
頭蓋骨肥厚、後縦靭帯骨化症
腫瘍
甲状腺、耳下腺、婦人科系などの良性・悪性腫瘍、子宮筋腫、卵巣嚢腫、石灰化上皮腫
その他
前頭部禿頭、低lgG血症
出典:筋強直性ジストロフィー診療ガイドライン2020
筋強直性ジストロフィーの検査・診断
筋強直性ジストロフィーでは首や手足の筋力低下や筋肉の強直障害、多臓器障害など特徴的な臨床症状から疑われます。しかし、これらの症状はほかの疾患にもよくみられる症状であるため、症状の有無だけでは筋強直性ジストロフィーの確定診断はできません。確定診断をするためにはサザンブロット法やrepeat-primed PCR法という遺伝子検査が必要になります。
サザンブロット法
repeat-primed PCR法
保険適用
適用内
適用外
外部委託
可能
可能
採血量
多い
少ない
リピート長(リピートされる回数)の測定
多くのリピートで推定可能
短いリピートのみ可能
限界
リピート長の伸長が短い場合、検出できない可能性がある
多くの患者でリピート長が推定できない
出典:筋強直性ジストロフィー診療ガイドライン2020
サザンプロット法はリピート回数が多い遺伝子の検出に優れていて、リピート長を測定しやすいメリットがあります。しかし、リピート長が短い場合は正常な遺伝子との鑑別が難しいため、軽症例を見逃す可能性があります。
repeat-primed PCR法はリピート長が短い遺伝子も検出可能なうえ、採血量が少なく患者への負担が少ないことが特徴です。しかし、リピートの回数が多くなるとリピート長の測定ができません。そのため、まずサザンプロット法で検査し、軽症例が疑われる場合にrepeat-primed PCR法で実施する方法が一般的です。
配信: Medical DOC