●「文書偽造罪」は成立しない
ネット上には「文書偽造(刑法159条など)にもあたるのでは?」という声もありました。
本件では、登記移転の手続きのためには、羽賀氏から羽賀氏の会社に不動産の譲渡が行われたことを証明する書類(売買契約書など)が必要となります。そうすると、羽賀氏が嘘の内容の契約書等を作っているはずだから、私文書偽造罪になるのではないか、ということのようです。
しかし、刑法上の文書偽造は、基本的に、作成権限がない人が、作成権限があるかのように偽って文書を作成する場合に成立します。本件では、羽賀氏は自分の会社に不動産を売却するという契約書を作成する権限自体はありますので、私文書偽造罪は成立しません。
●司法書士が逮捕されたのは、なぜ?
本件では、司法書士も逮捕されています。
司法書士は、登記手続等の専門家です。おそらく、本件のような嘘の登記に加担したことで、羽賀氏の共犯として逮捕されたのだと思われます。
ただ、羽賀氏が司法書士に単に登記手続を頼んだだけだと、司法書士としては頼まれた手続きを仕事として行っただけということになり、羽賀氏の共犯にはならないと思われます。
反面、羽賀氏から強制執行のことを相談され、羽賀氏と結託して不動産の仮装譲渡・登記を行ったといえるような事情があれば、共犯となりそうです。今後このような点について捜査が進んでいくのではないでしょうか。
配信: 弁護士ドットコム