監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
拡張型心筋症の概要
拡張型心筋症(DCM:Dilated cardiomyopathy)は、心臓の収縮機能が低下し、左心室(心臓の左下の部屋)が拡張する病気です。
心臓の壁を構成している筋肉の構造や機能が障害される病気のことを「心筋症」といい、主な病型には以下の3つがあります。
拡張型心筋症
肥大型心筋症
拘束型心筋症
心臓は、収縮と拡張を繰り返すことで全身に血液を送り届けています。拡張型心筋症になると、心臓の筋肉が収縮する能力が低下し左心室が拡張するため、全身に十分な血液を送り出すことが難しくなります。
その結果として、心不全を引き起こす可能性があります。
厚生労働省「令和4年度衛生行政報告例 統計表 年度報」によると、拡張型心筋症の患者数は18,234人とされています。
この病気は子どもから高齢者までの幅広い年齢層で発症する特定疾患(難病)に指定されています。重症化を防ぐために、早期の診断と適切な治療が重要です。
拡張型心筋症の原因
拡張型心筋症の主な原因は、次のとおりです。
遺伝的な要因
ウイルス感染症
自己免疫疾患
拡張型心筋症の原因は、完全には解明されていない部分も多いのが現状です。また複数の要因が絡み合って発症することもあります。
遺伝的な要因
拡張型心筋症の主な原因は遺伝的な要因であり、その割合は約20〜40%といわれています。
心筋の細胞の一部であるタンパク質の遺伝子変異によって発症します。
親が拡張型心筋症の場合は、子どもの遺伝子検査が推奨されます。反対に、先に子どもの拡張型心筋症が見つかった場合は、家族が検査を行うこともあります。
ウイルス感染
ウイルス感染が心筋に影響を及ぼし、心臓の筋肉が拡張してしまうことがあります。
一部のウイルスが心筋に感染し炎症を起こすことで、時間とともに筋肉が拡張して収縮力が低下するためです。
例えば、コクサッキーウイルスやアデノウイルス、C型肝炎ウイルスなどが拡張型心筋症を発症する原因となることがあります。
このようなウイルス感染による拡張型心筋症は「心筋炎後拡張型心筋症」と呼ばれます。
自己免疫疾患
自己免疫疾患が心筋に影響を与え、拡張型心筋症を引き起こす場合もあります。
自己免疫疾患では、体の免疫システムが誤って心筋を攻撃し、炎症を引き起こすことがあります。その結果、心臓のポンプ機能が正常に機能しなくなり、心不全に至る恐れがあります。
自己免疫による拡張型心筋症の場合は、免疫吸着療法が期待できるため早めの受診が大切です。
配信: Medical DOC