●知事、警察本部長、公安委員長から謝罪はなかった
さらに2週間ほどが過ぎた9月25日、8月の最高裁決定について地元議会で質問を受けた知事、警察本部長、及び公安委員長の3人が答弁に立ったが、原告への謝罪などについての質問には誰の口からも明答が発せられなかった。
質問に臨んだ議員2人のうち、謝罪や検証、再発防止策、公安委の監督責任などを追及した丸山はるみ道議(共産)の問いに対する3者の答弁を以下に採録しておく。
「このたびの道警察に係る訴訟についてでありますが、本件については国家賠償法上、訴訟の当事者が北海道となることから、必要な手続きを進めてきたところであり、警察官の職務執行を管理し事実関係を把握している道警察において一貫して方針を判断し、対応してきたものであります。私からも、道警察において適切な職務執行に努めていただくようお伝えしており、今後とも適切な対応に努めていただきたいと考えております」(鈴木直道知事)
「初めに、国家賠償請求訴訟の判決確定を受けての謝罪についてでありますが、道公安委員会と致しましては、道警察において確定した判決に従い、適切に対応するものと承知をしております。次に、判決確定を踏まえた道警察への対応についてでありますが、道警察からは、警察官の行為を一部違法とした第二審の札幌高裁の判決を受けておこななわれた上告等が最高裁により退けられ、同判決が確定した旨の報告を受けたところであります。
道公安委員会といたしましては、警察官の行為が一部違法とされたことについて真摯に受け止めているところであり、道警察に対し、各種法令に基づき適切に職務執行をするよう指導したところであります。
最後に、公安委員会のあり方と道警察への指導についてでありますが、道公安委員会では定例会議等において、道警察から諸般の活動について報告や説明を受け、不明な点について質問するとともに、随時必要な指導をおこなっているところであります。
道公安委員会といたしましては、引き続き道警察に対し、道民の安心と安全を守り期待と信頼に応えるべく職務にあたるよう指導して参ります。以上でございます」(吉本淳一・公安委員長)
「国家賠償請求訴訟判決確定を受けての謝罪についてでありますが、原告及び弁護団から警察本部長宛てに謝罪を求める要請を受けたことは、ご指摘の通りでございます。道警察と致しましては、確定した判決に従い適切に対応して参ります。次に、再発防止についてでありますが、道警察と致しましては、このたびの判決内容を踏まえ、現場活動にあたる警察官が根拠法令に基づき与えられた権限を適切に行使できるよう、必要な指導・教養に努めて参ります。以上でございます」(伊藤泰充・警察本部長)
謝罪をするかどうか、検証をするかしないか、再発防止策を定めるか否か、いずれもイエス・ノーで答えられる問いをことごとく無視した抽象的な答弁。噛み合わないやり取りに丸山議員は再質問、再々質問を重ねざるを得なくなったが、これらに対する答弁も先述の各発言の繰り返しとなり、とりわけ3度に及んだ知事答弁は3度ともほぼ同じ文言に終わった。危ぶまれる「慰謝料払いました、はい終わり」が、現実のものになりつつある。
5年強に及ぶ争いを終えた原告たちは、今も声を上げることをやめようとしない。不条理なことに、声を上げれば上げるほど「モヤモヤ」は増えていくようだが。
※元原告や支援者らで作る『ヤジポイの会』の公式サイトで、判決確定後のコメントなどを公開中。
配信: 弁護士ドットコム