羽賀研二容疑者を「恋愛リアリティ」に起用、素人女子大生と「カップル成立」させたABEMAの罪深さ…OBが厳しく指摘

羽賀研二容疑者を「恋愛リアリティ」に起用、素人女子大生と「カップル成立」させたABEMAの罪深さ…OBが厳しく指摘

●羽賀研二容疑者の起用に感じ取れるのは「興味本位の姿勢」と「無責任さ」だけ

ところが、ABEMAは羽賀容疑者を番組に起用してしまった。

しかも、よりによって「ほぼ一般人に近いような、キスの経験もないという21歳の女子大生」も出演する恋愛リアリティショーに出演させ、「カップル」にしてしまったのだ。

これが罪深い事態であることに気づかなかったのだろうか。「ほぼ素人の真面目な若き女性」を「ほぼ反社と考えられる人物」の前に獲物として放り出し、演出上だけのことかもしれないがカップルにしてしまった。

たしかにABEMAは、地上波テレビがキャスティングしないような人物を積極的に引き受けて話題になってきた。

地上波に出られなかった頃の「新しい地図」(SMAPの元メンバーである草彅剛さん、稲垣吾郎さん、香取慎吾さん)に出演のチャンスを与えたのもABEMAだった。「少数派」「異端」として注目されることのなかった人物を次々にゲスト出演させて、若年層にも注目される新しい視点の報道番組を開拓してきたのもABEMAだ。OBである私はそのことをよく知っている。

そのような意義の感じられる「あえてテレビに出られない人物をキャスティングする姿勢」と、羽賀容疑者の起用とは、まったく異なるものだと断言できる。

厳しい言い方をすれば、感じ取れるのは、興味本位の姿勢と無責任さだけだ。

番組サイドは羽賀容疑者の「悪さ」もよく理解したうえで、あえて「プロのジゴロ」としての立ち位置を求め、「ジゴロをウブな素人たちの前に放ったら面白いことが起こるだろう」くらいの無責任さで起用したと思えてならない。

恋愛リアリティを好む若い視聴者層には、羽賀容疑者の犯罪歴など知らない人もいただろう。羽賀容疑者はこの出演実績を、彼を知らない世代の相手に対しても名刺代わりに使えただろう。

●メディアの責任より面白さや収益性重視…ABEMAの番組作りの「功罪」

恋愛リアリティ番組「テラスハウス」への出演がきっかけとなり、追い詰められて亡くなった木村花さんの出来事はまだ記憶に新しい。われわれテレビマンは反省し、素人に近いような出演者の安全を絶対に守らなければならないと決意したのではないのだろうか。

なのになぜ「キスもしたことのない21歳女子大生」を「反社にほぼ準ずると思われるような羽賀容疑者」と関わらせてしまったのか。出演者を守るどころか、下手をすれば彼女にトラウマや消えない傷跡を残してしまいかねない状況にしてしまったのは、他ならないABEMAだ。

ABEMAはスタッフも若い。そして、テレビ業界の外部に位置するサイバーエージェントの若いスタッフが、テレビ朝日の若いテレビ人とタッグを組むことによって、斬新で若い人にも受け入れられる面白い番組をこれまで制作してきた功績は大きいと思う。

それは反面、メディアとしての責任よりも、面白さや収益性を重視することにもつながってしまいがちだ。

残念ながら、ABEMAには「無責任で興味本位・収益本位な社風」があると思う。その怖さは私も在籍していた頃から認識していたし、「いつか大きな問題を起こしてしまうのではないか」という危惧を持っていた。

だからこれまでも、ことあるごとにABEMAには苦言を呈してきたし、今回もOBだからこそあえて厳しい言葉を言いたい。

羽賀容疑者の危険性や「準反社と考えられること」に気がつけなかった、あるいは気づいていたのに起用したのは、まっとうなメディアのするべきことではないし、決して許されない。

今からでもABEMAは真摯に反省すべきだ。出演者の起用方針を定めて発表するべきだし、羽賀容疑者に関係した出演者やスタッフへのケアをすべきだろう。

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