人類は、700万年前に誕生して以来、長い時代にわたって、男は「狩り」を、女は「採集」を受け持ってきました。
女性は、木の実や食べられる葉や根が、どこに、どういうふうにあるのかを判断して、それを採集するのです(スーパーなどでほしい商品がどこにあるかを探し、新鮮さや大きさなどを品定めして、買うのと同じように)。
そのためには、食料がある場所や、その成熟具合を正確に見極める能力が必要です。このことから、「“場”を読む能力」は、「“顔”を読む能力」と同じく、女性のほうが優れているという結果が生まれました。
一方の男。男は狩りをしてきました。狩りでは、自分の位置を常に知っていることが大切です。でないと、獲物をとった後、家に帰れなくなってしまいます。だから、「(太陽や地形などで)自分の位置情報を常に確認している」というのが男の大きな特徴です。
女性はあまり狩りをしなかったようで、その結果、「地図の読めない女」が誕生したというわけです。方向オンチが女性に多い(失礼!)理由です。
ところが、女性も、お得意の「“場”を読む能力」をうまく使えば、男に勝る地図の読み取りができます。“目印”地図を使うのです。「教会の前を右方向に進んでしばらく行くと、天使の像がある。そこを左に曲がって、小さな橋を渡ってすぐ右へ行く…」などと“目印”、つまり“その場”に何があるかに基づいた指示をすると、女性は男性より正確に早く目的地にたどり着くことができるのです。
これが男性だと、初めの教会ぐらいはわかるのでしょうが、「えーっ、天使?どこにもいないぞ、橋?川がないし…」などと大混乱(する人が多い)。
「採集の女性」と「狩りの男性」の違いは、会話にも表れるようになってきました。
男の会話は、獲物をとるための「問題解決型」であるのに対して、女の会話は、ファミリーを大切にした「なかよし型」です。“脳”の「“ことば”を担当する部分」 が異なるのです。
男は「“なかよし型”の会話を楽しむ」ことが苦手なのです。どうしても、問題点とその解決策を考えてしまうのです。しかも、会話の中に“勝ち負け”を持ち込んでしまうクセがあります。
「男と女は、どうもうまく理解ができない」という男女のすれ違いには、こんな理由があるのです。
私は、よく妻と飲み会に出かけます。その時、私は、一度でも行ったことがあるお店には、必ずたどり着くことができるのですが、妻は、ほぼ確実にできません。
でも、いったんそのお店に入ると、妻の独壇場(どくだんじょう)。店のインテリア、ママの髪形の変化、この前来た時にいたお客さんの服装まで、詳しく言えるのです。私などは、ただただ驚くばかりです。
以上のことは、男女のどちらが優れているとか、男女の役割はこうあるべきだとか、というのではありません。人間としての長い時間の経過と役割分担が男女を特徴づけたということです。
アメリカのNASAが行った火星探査の訓練で、男だけのチームは、競争心がはたらきすぎて、チームを危険にさらすリスクが大きいといいます。一方で女性だけの場合、必要以上に危険を避ける傾向がある、ということがわかりました。
つまり、男の「問題解決能力」と、女の「みんなをまとめて協力する能力」が一緒になった「男女混合チーム」こそ、理想のチーム編成だということが改めて確認されたのです。
男と女は、このような、おたがいの長所と短所をしっかりと理解してお付き合いをすれば、ケンカやすれ違いも減って、もっともっと仲良くなれるはずです。
次回は、「“しろめヂカラ”、“まゆヂカラ”で、魅力倍増 !! 」 です。
●プロフィール
なかむら・かつひろ 1951年山口県岩国市生まれ。早稲田大学卒業後にNHK入局。「サンデースポーツ」「歴史誕生」「報道」「オリンピック」等のキャスターを務め、1996年から「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)ほか、テレビ東京などでワイドショーを担当。現在は広島経済大学名誉教授。著書 に「生き方はスポーツマインド」(角川書店)、「山田久志 優しさの配球、強さの制球」(海拓舎)、「逆境をチャンスにする発想と技術」(プレジデント社)、「言葉力による逆発想のススメ」(広島経済大学研究双書)などがある。講演テーマに「“顔”とアナウンサー」「“失敗の歴史”からの人生訓」「ウィンウィン“説得術”」など多数。
配信: アサジョ
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