耳管狭窄症の治療
耳管狭窄症では原因となる病気に対する治療や、耳管の周りの炎症に対する薬物療法をおこないます。
同時に耳管の狭窄を空気を通して改善させる通気処置療法をおこなうこともあります。
薬物療法や通気処置療法で十分な改善が見られない場合は、鼓膜チューブ留置術を検討します。
薬物療法
薬物療法では消炎剤や抗アレルギー薬、ステロイド薬などを投与して、耳管狭窄症の原因となる耳管の周りの炎症を改善させます。
重症例ではステロイド薬を咽頭側や鼓膜側から耳管内に注入したり、耳管咽頭口の粘膜に注射することもあります。
通気処置療法
通気処置療法は、鼻から耳管の入り口に専用の器具を挿入し、耳管に空気を送って狭窄を改善させる治療法です。
耳管の狭窄が改善すると中耳の陰圧も解消できるため、治療後は耳の閉塞感が減少します。
通気処置療法は主に外来でおこなわれ、症状が続く場合は数ヶ月ほど通院することもあります。
鼓膜チューブ留置術
鼓膜チューブ留置術は、鼓膜に小さな穴を開けてチューブを挿入し、耳管の機能をつくる手術です。
手術は鼓膜へ局所麻酔をおこない、レーザーで鼓膜に穴を開けた後、直径1〜2mmほどのチューブを挿入します。
チューブはシリコン製のもので、中耳と外耳道を直接つなぐ役割を果たします。
手術から1年ほど経った頃に外しますが、開いた穴はその後自然に閉じることが多いです。
耳管狭窄症になりやすい人・予防の方法
耳管狭窄症は風邪や副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎が発症しやすい人になりやすいです。
鼻やのどに炎症が起こりやすいと、耳管に影響を及ぼします。
予防のために規則正しい食事や睡眠をとって免疫力を高め、風邪や鼻炎にかかりにくい体をつくりましょう。
加湿器などで部屋の湿度を適切に保つと、鼻やのどの炎症の悪化も防げます。
慢性的なアレルギー鼻炎などの症状を繰り返している人は、耳鼻咽頭科を定期的に受診し、適切な治療を受けましょう。
花粉やハウスダストが原因で起きている場合は、室内の換気や空気清浄機の利用、外出時の眼鏡とマスクの装着なども効果的です。
関連する病気
耳管開放症
耳管閉鎖障害
急性鼻炎
上咽頭炎
上咽頭腫瘍
参考文献
一般社団法人日本耳科学会耳管狭窄症診断基準
一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会耳の症状
一般社団法人日本耳科学会耳管機能検査マニュアル(2016)
守田雅弘:耳管狭窄症の治療. 耳鼻咽喉科臨床, 100(3), 238-239, 2007
坂上雅史:耳管機能不全の診断と治療. 日本耳鼻咽喉科学会誌, 122, 1361-1365,2019
坂田俊文:耳閉感の診断と治療. 日本耳鼻咽喉科学会, 122, 732-737,2019
小林俊光, 高坂知節, 沖津卓二:ティンパノグラムの利用法. 耳鼻咽頭科臨床, 80(10), 1485-1495,1987
倉田響介, 佐藤宏昭, 顔懿賢, 他:上咽頭がんの耳管検査. 日本耳鼻咽喉科学会誌,91, 210-214, 1988
配信: Medical DOC
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