糖尿病になると心臓病・脳卒中のリスクが数倍高まるのはなぜ?【医師解説】

糖尿病になると心臓病・脳卒中のリスクが数倍高まるのはなぜ?【医師解説】

糖尿病を発症すると、心臓病や脳卒中などの心血管疾患リスクが高くなるといわれています。しかし一体なぜ、それらのリスクが高まるのでしょうか? 予防法はあるのでしょうか? 地域・総合クリニック十日市場の布目先生に教えてもらいました。

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監修医師:
布目 英男(地域・総合クリニック十日市場)

富山医科薬科大学医学部(現:富山大学)卒業後、富山医科薬科大学附属病院(現:富山大学附属病院)、成田赤十字病院で研修。東京女子医科大学、水戸済生会総合病院、板橋中央総合病院にて糖尿病診療・総合診療に従事。葛西内科皮膚科クリニック院長を経て2024年4月医療法人知粋会 地域・総合クリニック 十日市場管理者就任。

糖尿病と心血管疾患の関係は?

編集部

糖尿病になると心臓病や脳卒中のリスクがさらに高くなると聞きました。本当ですか?

布目先生

はい、本当です。なぜなら、糖尿病は動脈硬化を進行させる重大な要因になるからです。心臓病や脳卒中は動脈硬化を原因として発症することが多いので、糖尿病になるとそれらの発症リスクが高まるのです。

編集部

なぜ、糖尿病は動脈硬化を進行させるのですか?

布目先生

糖尿病の人の体内ではインスリンが十分働くことができず、血糖を細胞のなかへうまく取り込めなくなります。このようにインスリンが分泌されているにもかかわらず、作用が低下している状態のことをインスリン抵抗性といい、インスリン抵抗性が生じると、血液のなかに糖が大量に含まれた状態になります。血液に糖が大量に含まれていると血液はドロドロになり、血管の壁を傷つけます。それにより血管の壁が厚くなり、動脈硬化が生じるのです。

編集部

動脈硬化が起きると、心臓病や脳卒中になるのですか?

布目先生

はい。動脈硬化が起きると血管が狭くなったり、血の塊(血栓)で血管がふさがれたりすることがあります。こうした症状が心臓の血管で起きれば心筋梗塞や狭心症、脳の血管で起きれば脳卒中を起こします。

編集部

具体的に、糖尿病になるとそれらの疾患を発症するリスクはどれくらい高くなるのですか?

布目先生

心臓や血管に起きる病気のことを心血管疾患といいますが、研究によると、糖尿病患者が心血管疾患で死亡するリスクは、糖尿病でない人の1.8~2.5倍高まることがわかっています。また、脳卒中の中でも血管が詰まるタイプの疾患を脳梗塞といいますが、糖尿病のある人はない人に比べ、脳梗塞を発症するリスクが2〜4倍高いことがわかっています。

編集部

ずいぶんリスクが高くなるのですね。

布目先生

はい。それから、糖尿病があると心筋梗塞の発症率が高まるというデータもあります。心筋梗塞は一度起きると、再発しやすいという特徴がありますが、糖尿病があると、一度心筋梗塞を発症したのと同じくらい、発症率が高まるのです。

糖尿病による心血管疾患はどう予防できるのか?

編集部

糖尿病の人が心血管疾患を予防するにはどうしたら良いのでしょうか?

布目先生

まずは食事療法や運動療法を継続し、生活スタイルを改善することが重要です。血糖値が高い状態をそのままにしておくと動脈硬化が進行しやすくなるので、食事ではカロリーやコレステロール、糖質に注意することが必要です。また有酸素運動や筋力トレーニング、ストレッチなどの運動療法も継続し、肥満や代謝の改善に努めるようにしましょう。もちろん、定期的に医療機関を受診し、医師に状態をチェックしてもらうことも大切です。

編集部

そのほかに気をつけることはありますか?

布目先生

特に気をつけたいのは、高血圧と糖尿病が合併すると心血管疾患のリスクがますます高まるということです。研究により、血圧が高いと心臓病や脳卒中のリスクが高くなることがわかっています。

編集部

高血圧になるとなぜ、心臓病や脳卒中のリスクが高まるのですか?

布目先生

高血圧も動脈硬化の危険因子となるからです。血圧が高くなると血管の内部が傷つき、血管が厚くなったり、硬くなったりします。そのため動脈硬化が進みやすくなり、心臓病や脳卒中を引き起こすのです。

編集部

具体的に、どれくらいリスクが高くなるのですか?

布目先生

糖尿病で、上の血圧が150mmHg以上の場合、血糖値が正常で上の血圧が120mmHg未満の人に比べ、心疾患のリスクは8.4倍上昇することがわかっています。同じく、糖尿病で上の血圧が150mmHgの場合、脳卒中のリスクは5.6倍になることがわかっています。そのため食事では血糖のコントロールに加えて減塩に気をつけるなど、高血圧対策も重要です。

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