「緊急予備資金」とは? 災害時の生活を支えるお金を準備しよう!

緊急予備資金の目安は?

緊急予備資金として準備しておきたい金額は、働き方や家族構成によって異なります。ここでは、会社員と自営業者の例を挙げて、緊急予備資金の目安を見ていきましょう。

会社員の世帯:生活費の6か月分

会社員の世帯なら、生活費の6か月分程度が目安となります。

会社員がケガをしたり、勤務先の休業などで一時的に収入がなくなったりした場合、健康保険の傷病手当金や雇用保険の基本手当を受けられることがあります。

しかし、これらの手当は給与の5~8割程度しか支給されません。また、申請から支給まで1~2か月程度かかります。そのため、すぐに使えるお金をある程度準備しておく必要があります。生活費の6か月分は確保できると安心でしょう。

なお、家屋の修繕や家財の買い替えなどは大きな金額になるため、緊急予備資金だけでは足りないケースもあります。政府の公的支援制度を活用したり、火災保険や地震保険に加入して損害に備えたりする方法が有効です。

自営業者の世帯:生活費の1年分

自営業者の世帯は、会社員以上に緊急予備資金を蓄えておく必要があります。会社員のように健康保険の傷病手当金や雇用保険の手当が受けられないためです。

1年分程度の生活資金を確保しておくことが望ましいでしょう。

家財の買い替えや家屋の修繕については会社員同様、政府の公的支援制度や火災保険・地震保険の活用が有効です。また、店舗を構えて営業している場合は、店舗の被害に備えて店舗保険にも加入しておくと安心です。

1か月あたりの生活費を把握しよう

普段から家計簿をつけておらず、そもそも1か月あたりの生活費を把握できていない家庭もあるのではないでしょうか。もしもに備え、緊急予備資金を準備するために、まず1か月当たりの生活費がどれだけかかっているかを知るところから始めましょう。

生活費の内訳としては、以下のようなものが一般的です。

・基本生活費

食費

水道光熱費

通信費(電話代、インターネット代、NHK受信料など)

医療費

衣服費

美容理容費

日用品・雑貨費

レジャー・娯楽費

教育費(新聞購読費や書籍代などを含む)

交際費

・住居費

家賃

管理費・修繕費

住宅ローン

・車維持費

ガソリン代

駐車場代

自動車保険料

車検代

・保険料

社会保険料(国民年金、国民健康保険など)※個人事業主の場合

民間保険料(生命保険、損害保険、個人年金、学費など)

・教育費

授業料

塾・習い事代

・その他

住宅ローン以外の返済など

積み立て運用資金(iDeCo、NISA、その他金融商品の積み立てなど)

生活費の内訳を把握するには、預金通帳の記録やクレジットカード・電子マネーの利用明細などから、何にどれだけかかっているのかを調べます。レジャー費や娯楽費など、毎月の支出はあるものの金額が一定しないものは見落としがちなので、日記やSNSへの投稿などから金額を思い出すのも有効です。

実際に大規模災害が発生した場合、国民年金保険料や授業料などは免除となるケースもあります。しかし、手続きに時間を要することもあるため、これらの費用も生活費に含めて見積もっておくとよいでしょう。

自分だけでは生活費を把握するのが難しい場合は、ファイナンシャルプランナーなどお金の専門家に相談するのもよいでしょう。

現金と普通預金で準備しよう

緊急予備資金は、現金と預金に分けて準備しておくことをおすすめします。災害時には保険や公的支援制度を利用できる場合がありますが、手続きや支給に時間がかかることもあるため、すぐに利用できる現金・預金は強い味方です。

現金は1週間分を目安に

大規模災害時は電気などのライフラインが止まり、金融機関のATMが利用できない可能性があります。そのような事態に備えて、1週間分程度の生活費を現金として手元に準備しておくと安心です。

現金は災害時にすぐに持ち出せるよう、非常持ち出し袋に入れておくことをおすすめします。また、災害時は店舗側もおつり用の細かいお金を準備できない場合があるので、1万円札だけではなく千円札や小銭も用意しておくと便利です。

ただし、避難先では紛失や盗難に注意しましょう。

預金は普通預金口座での準備が便利

現金以外の緊急予備資金は、普通預金口座で準備しておくのがおすすめです。

定期預金のような解約手続きが不要なので、引き出しがスムーズです。また、災害時でもATMが利用できる状態ならすぐに引き出せます。

加えて、普通預金口座を設ける先は、お住まいの地域に実店舗がある金融機関が安心です。ATMが利用できない状態でも、店舗の窓口で引き出しに応じてもらえることがあるためです。金利や利便性の面で普段はネット銀行を利用している方でも、災害時のことを考えて実店舗のある金融機関の口座も持っておくとよいでしょう。

「災害時にキャッシュカードや通帳・印鑑を持ち出せなかった場合はどうするの?」と不安に感じられる方もいるかもしれませんね。このような場合、本人確認ができれば預金の引き出しができる可能性があります。大規模災害時には、日本銀行が被災地の金融機関に、身分証明書があれば預金を引き出せる「災害時における金融上の特別措置」を要請するからです。

本人確認の際は、運転免許証やマイナンバーカードなど顔写真付きのものがあれば、それ一つで身分証明書として利用できます。

災害時のお金の引き出し方法については、別の記事で詳しく紹介しています。

「災害時お金の引き出しに通帳と印鑑以上に大切なもの」

https://www.bosai.yomiuri.co.jp/article/2330

お金が不足した場合の相談先

緊急予備資金を用意していても、避難期間が長引いたり、生活再建のための費用がかさんだりして、お金が不足してしまう可能性もあります。その場合は、まずお住まいの市町村の役場に相談してみましょう。被災者が受けられる公的支援などの情報を紹介してもらえるかもしれません。

また、大規模な災害があった場合は無料で相談できる「災害相談専用ダイヤル」が設けられる場合があります。総務省のウェブサイトなどで情報が公開されるので、こちらもチェックしてみましょう。

被災時に受けられる公的支援にはどのようなものがあるか、事前にある程度知っておくことも大切です。代表的な公的支援には以下のものがあります。

⚫︎災害により住宅が被害を受けた場合の支援

⚫︎その他の公的支援

災害の規模により受けられる支援が異なる場合があるため、詳しい支援内容や条件は担当窓口に問い合わせましょう。

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