●「生きる意味がわからない」と言われたら…
もしもわが子に、無気力さが見受けられたら…親はどう対処するべきなのか。
「まず、親は冷静になり、今子どもが置かれている事態をしっかりと把握しましょう。そして、どうすることが子どもにとって最善なのかをよく考えることです。自己流で解決しようとせず、お子様にとって、今どんな問題が起きているのかを把握し、その問題をなるべく早急に取り除くことが大切です。時には専門機関からのアドバイスを受けることも必要です」(藤島氏 以下同)
それでは、無気力症候群の子に見られる兆候とは?
1.朝、起きられなくなる、学校の授業中にしっかり寝てしまう
「どんなに起こしても起きない時は、無意識のうちに“自分を外界から守ろうとしている”ととらえることもできます」
2.「学校に行く意味」「勉強する意味」「生きている意味」がわからないと言い始める
「単にかまってほしいという場合と、うつ症状や無気力状態へと移行してしまっている場合が考えられます。自分の子どもが、どちらの状況なのか…親としての見極めが問われます」
3.思春期特有の心と体の成長と重なり、怒りっぽくなるなど、態度にも変化が生じる
「何に対しても自信がなくなり、自己肯定感が低くなるため、“いくら努力しても思うような結果が得られない”という怒りやイライラが募ります」
●無気力症候群の子どもは心のエネルギーがゼロに
「ただし、上記の兆候は、無気力症候群特有のものではありません。無気力症候群の症状は、学校生活における様々な問題と区別することが難しいとも言えます。だからこそ、子どものことを一番愛している親御さんが、自分の子どもが今、本当に危険な状態であるのか、思春期特有のものなのか…見極めて判断することが重要なのです」
無気力症候群に陥った子どもは、心のエネルギーが完全に奪われた状態だという。
「このような状態に陥ってしまうと、“皆も頑張っているから、頑張ろう!”とか、“2~3日ゆっくりすれば治るよ”といった声かけでは、決して解決されません。早期に子どもの異常に気づき、適切な対処を施さなければ、本格的な“うつ”に移行してしまう可能性もあります。でも、決して焦らないでください。現在のお子様の状態を理解し、まずは親御さんが変わろうとする気持ちを持ちましょう。専門機関に相談する場合は、少し冷静になってからの方がよいと思います」
勉強は二の次、まずは“自分の価値や存在意義”を肯定できる前向きな感情を育てあげることが大切だと語る藤島氏。
「様々な心の問題を解決するには、自己肯定感を養い、折れない心を育てることが大事です。お子様を誰かと比べることを止め、例え口に出さなくても、“どんな時もあなたの味方だからね!”という態度を示しましょう。そんな親御さんの気持ちが、やがてはお子様へと伝わり、精神の安定につながります」
まずは自己肯定感を回復させ、“努力をすれば結果が出る”ということを数多く体験させること。そして最終的には、自分の頭で考え、結果を導き出す力を養うことが目標。人間として一番大切なのは勉強ではない。自分自身の力で考え、行動し、結果を出して前に前にと進んでいく底力こそが、何より重要なのではないだろうか。
(取材・文/吉富慶子)