「腰痛」を我慢してはいけない理由はご存じですか? 放置のリスクや受診の目安も医師が解説!

「腰痛」を我慢してはいけない理由はご存じですか? 放置のリスクや受診の目安も医師が解説!

腰痛は日本人の多くが経験する一般的な症状ですが、なんとなく我慢して過ごしている人は多いようです。しかし、腰痛の専門家に相談して適切な治療を受けることで、痛みの軽減や生活の質の向上が期待できます。腰痛の治療法や整形外科を受診するメリットなどについて、「平井整形外科クリニック」の平井志馬先生に解説していただきました。

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監修医師:
平井 志馬(平井整形外科クリニック)

埼玉医科大学医学部卒業。その後、東京大学医学部附属病院整形外科入局、東京都立墨東病院、横浜労災病院などで経験を積む。2023年、神奈川県横浜市に位置する「平井整形外科クリニック」の副院長に就任。現在も国立病院の脊椎外科部長、脊椎治療センター長として年間300件以上の脊椎手術をおこなう。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定脊椎内視鏡下手術・技術認定医、日本脊椎脊髄病学会専門医・指導医。

腰痛の原因

編集部

まず、腰痛について教えてください。

平井先生

腰痛は日本人の4人に1人が発症し、有訴率で見ても男女ともに最も多いと言われている「国民病」です。腰痛を引き起こす疾患には様々なものがありますが、CTやMRIなどの画像診断で原因が明らかになるものは約15%で、画像診断では異常がみられない非特異的腰痛が約85%を占めているとも言われています。

編集部

原因がはっきりとわからない腰痛が多いのですね。

平井先生

そうですね。大きく分けると、脊椎の骨や仙腸関節などの関節のほか、神経や筋膜や椎間板が腰痛の原因となっていることが多い傾向にあります。「ぎっくり腰」は、原因がはっきりわからない腰痛の代表的な疾患です。急性腰痛のうち、レントゲンやMRIなどの画像でわかる範囲で異常がない非特異性腰痛をぎっくり腰と呼んでいることが多いのです。実際の病態としては、筋肉に炎症がおこる「筋膜性腰痛」や椎間板が損傷して生じる「椎間板性腰痛」とも言われています。

編集部

筋膜性腰痛と椎間板性腰痛について、もう少し詳しく教えてください。

平井先生

筋膜性腰痛は、比較的頻度の高い腰痛です。筋肉の表面にある筋肉の膜(筋膜)やその周辺に炎症が起こって痛みが出現します。症状の特徴としては、腰を後ろに反らしたときの痛みで、腰の真中ではなく左右どちらか、もしくは両方に寄っています。

編集部

椎間板性腰痛についてはいかがでしょうか?

平井先生

骨と骨の間のクッションの役割である椎間板は30歳前後から老化すると言われています。その椎間板が減少してくることで骨と骨がぶつかり、痛みが出ることを椎間板性腰痛と言います。前かがみになった際、背中の中央部の強い痛みが出るという特徴があります。

腰痛の治療法

編集部

腰痛にはどんな治療法がありますか?

平井先生

例えば筋膜性腰痛の場合、コルセットや内服薬による治療で改善を目指すことができます。それでも改善しなければ、エコーを見ながら炎症が起こっている筋膜に直接注射をする「筋膜リリース」で症状が劇的に改善する患者さんもいます。

編集部

椎間板性腰痛についてはいかがでしょうか?

平井先生

筋膜性腰痛と同様の治療法に加え、体幹の筋力を鍛えることで痛みが改善することも多いですね。改善が見込めない場合は、自費診療になりますが再生医療を検討することもあります。また、手術をすることもありますが、まだ腰椎に対しての人工椎間板はないので、かなり身体の負担の大きい手術方法となってしまいます。

編集部

腰痛に対して、様々な治療法があるのですね。

平井先生

そうですね。基本的には、患者さんの負担の小さい治療法から始めていくので、まずは薬やリハビリなどをおこないます。改善しない場合には、ブロック注射や手術などが検討されることもあります。また、3カ月以上経過する腰痛に関しては、脳が痛みを感じやすくなってしまっていることも考えられるため、必要に応じて麻薬性鎮痛剤によるアプローチも検討します。