朝ドラ『虎に翼』最終回にかけて“退場済みなのに”存在感を増していた35歳俳優。絵を見るたびに

朝ドラ『虎に翼』最終回にかけて“退場済みなのに”存在感を増していた35歳俳優。絵を見るたびに

『虎に翼』(NHK総合)が、後半部へ向けてそろそろ折り返そうというところで、判事・花岡悟が餓死して画面上から退出することになった。


 にもかかわらず、最終回が近づくにつれ、花岡の存在が画面外から強く語りかけてくるように感じた。役柄を完全につかんだ岩田剛典が演じるからなのか。これはいったい、どういうことだったのか?

イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、フレームの内と外をつなぐ岩田剛典について解説する。

信念の人たちの決定的違い

『虎に翼』に登場するふたりの判事、桂場等一郎(松山ケンイチ)と花岡悟(岩田剛典)は、どちらも決してブレない信念の人たちである。戦後、前者は最高裁判所第5代長官となり、後者は食糧管理法の担当判事になった。

 司法の独立をなんとしても守ろうと身を粉にする桂場と、闇市を取り締まる立場としてヤミ米を買わなかった花岡。どちらも凄まじい熱量だが、でも決定的な違いがある。それは、食べるか、食べないかだ。

「食べないとやっていけないですし、花岡は『法がそうなっているから』というので餓死してしまった」

『モデルプレス』のインタビューで、桂場役の松山ケンイチがそう言っている。甘いものが好物である桂場は、甘味処「竹もと」に足しげく通い、大好きなあんこ団子を食べた。一方、花岡は配給以外の食糧を手に入れることを頑なに拒み、第10週第50回で極度の栄養失調から餓死した。

アメリカ映画的なキャラクターを演じる意味

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 どうしてそんなに頑ななのか。いくら生真面目な人だからといって、自分の生命を危険にさらすのは、ちょっと度が過ぎている。でも、どこまでも信念に忠実であろうとする花岡は、忠実であるがために花岡たり得る。そしてそのために本作の中盤で画面上から退出することになった。

 自分がどうなろうと担当判事であるからには、ヤミ米は食べない。食べないと決めたら絶対に食べない。厳格なルールと行動原理の人。こうした頑なさは、非常にアメリカ映画的なキャラクターだと思う。

 アメリカ映画のキャラクターとは、何より自分の行動原理に忠実。一度そうと決まったキャラクター(性格)からは決してブレない。例えば、主人公が悪役を倒すキャラ設定なら、どんな困難な状況の中で自分の生命を危険にさらそうともくじけることなく悪を倒す。いわば、悪を倒さなければならないという使命(キャラ設定)が遺伝子レベルですりこまれている。

 花岡の場合のキャラクター設定とは、まさに「法がそうなっているから」。その性格に忠実である様は、明らかに遺伝子が指示してヤミ米を食べないかのようだ。もし食べたらその人がその人ではなくなる。だったら余計食べない。

 花岡悟という極めてアメリカ映画的なキャラクターは、古典的ハリウッド映画俳優のようにまったく無駄がない演技をする岩田剛典が演じるから、なおさらに意味があったように思う。

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