花岡悟がいない『虎に翼』(NHK総合、午前8時放送)は、想像できない。主人公・猪爪寅子(伊藤沙莉)の学友で裁判官である彼が餓死した事実が、受け止められない……。
どうしてこんなに心が苦しくなるのか。花岡を演じたのが、岩田剛典だからなのだろうか?
イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、「花岡なしでは物語が成立しない」と思った理由を岩田剛典の表現力から読み解く。
ドラマ内の出来事だというのに……
「花岡、死す!」
ソロ初のアリーナツアー『Takanori Iwata LIVE TOUR 2024“ARTLESS”』の武道館ファイナルで岩田剛典がそうMCで言い放った。公演が行われた6月7日放送の『虎に翼』第10週第50回で、岩田扮する裁判官・花岡悟が極度の栄養失調で亡くなったのである。
花岡の死は、ドラマ内で深い悲しみと衝撃を与えた。ドラマの外でもSNS上で、朝からその話題がタイムライン上に流れていた。ドラマ内の出来事だというのに、なぜだか他人事とは思えず、やけに生々しいものを感じた視聴者は多いのではないだろうか?
寅子の兄・直道(上川周作)と夫・佐田優三(仲野太賀)は、太平洋戦争で戦死。父・直言(岡部たかし)も戦後に病死。わかってはいたけれど、まさか花岡がという気持ちはあった。でも彼も例外ではなかったのだ。
愛する片割れを想う眼差し
それだけ花岡悟という人物は、特別な存在だった。とはいえ、どうしてこんなにも悲痛な想いがするのだろうか。花岡の訃報から週があけた第11週第51回。誰よりも悲しみに暮れたのは、唯一無二の親友・轟太一(戸塚純貴)だった。
再登場した山田よね(土居志央梨)とカフェで会話する場面。「惚れてたんだろ、花岡に」とよねから言われた轟は最初それを否定するが、瞳の奥は嘘がつけない。よねが言うように、その眼差しは、今も昔もただただ花岡のことを慈しんでいる。
愛する片割れがいない過酷な現実。いったい、自分はこの戦後を生きていけるのだろうか。轟の心の声が漏れ聞こえるよう。
花岡がいないこの場面がもしかすると一番花岡の存在を強く感じさせるかもしれない。その悲痛を唯一共有できるのは、よねでも寅子でもなく、視聴者だけなのだとすると。
配信: 女子SPA!