介護は一人でおこなおうとすると、やることが多くすぐに疲弊してしまいます。そんな時は、行政などの介護サービスを利用するといいでしょう。一体どのように介護サービスを選べばいいのか、介護福祉士の大久保さんに伺いました。
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監修介護福祉士:
大久保 圭祐(介護福祉士)
総合病院に6年間勤務し、脳神経外科や整形外科のリハビリテーションを中心に、急性期・回復期・慢性期の全ての時期を経験。その後、介護支援専門員の資格を取得して家族と共に介護事業を設立し、居宅支援事業所と訪問介護事業をスタート。代表取締役であると同時に、現場では機能訓練指導員・介護職・ケアマネージャーを勤めプレイングマネージャーとして活躍。現在は、経営業務をメインに記事の監修やライターとしても活動中。
編集部
介護の中でも認知症介護は、家族への負担が大きいのでしょうか?
大久保さん
認知症の症状が進行し日常生活全般を介助することになると、状態によっては要介護者の体を抱える場面も多いため、身体的な負担だけでも大きいでしょう。夜中に対応が必要な場合、睡眠も十分に確保できないなど、身体的、精神的な負担は不安やストレスを強めることになります。ニュースなどでも「介護疲れ」という言葉が使われるほど、家族への負担は大きいものがあるのです。介護者の心身に余裕がないと不適切な対応も増えてしまいます。それによって症状の進行を招き、より負担が大きくなるという悪循環が起こることで、最終的には共倒れという危険性もあるのです。
編集部
そういう時は、介護サービスを利用した方がいいのでしょうか?
大久保さん
介護者の心身の負担が減り、介護福祉士から介護を学ぶ機会にもなりますので、積極的に利用した方がいいでしょう。代表的なサービスは、訪問介護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、入所施設であればグループホームなどです。かかる費用については、介護保険サービスは1~3割の自己負担、高額になった場合は状況に応じて払い戻しを受けられます。利用するには、市町村に要介護認定の申請を行い、居宅介護支援事業所(ケアマネージャ)に相談してサービス内容をまとめたケアプランを作成してもらう必要があります。ケアプラン作成までは無料なので、不安のある方は相談だけでもしてみることをおすすめします。
編集部
認知症の家族を支えるためにまわりが協力できることはありますか?
大久保さん
要介護者に寄りそう姿勢で、まずは認知症を正しく理解しておくことが大切です。そして、誰か一人に介護の負担が集中することは避けましょう。適切な対応をするためには、家族で分担して一人ひとりにゆとりがなければなりません。しっかりと支えるためには、介護者自身の体調管理も重要なのです。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
大久保さん
認知症は原因や症状のあらわれ方が人それぞれですので、どう対応すればいいのか分からない場面も多いと思います。何が正解か定義しにくい面もありますが、基本的にはその人らしく要介護者の尊厳が守られた状態が理想といえるでしょう。そして介護者側の尊厳も同様に大切です。家族皆が健やかな生活を送るためには、専門家の力を活用することが重要になります。不安や悩みは、家族だけで抱えこまず医療、介護の専門機関へ相談してみてください。
※この記事はMedical DOCにて【認知症介護のポイントを教えて! 介護方法によっては認知症が進行するって本当?】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
配信: Medical DOC
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