容疑者の出身地に「あーやっぱりね」 SNSに広がる“むき出し”の【差別感情】 カジュアルな露悪、なぜ?

容疑者の出身地に「あーやっぱりね」 SNSに広がる“むき出し”の【差別感情】 カジュアルな露悪、なぜ?

さまざまな「差別」はびこる、なぜ蔓延(まんえん)?

 SNSではときに、人々の驚くような「差別感情」を目撃することがあります。リアルなコミュニケーションにおいては耳にする機会はおそらくない、暴力的思考が公然と語られるネットの匿名空間では、誰しもが差別者に、そして被差別者になる危険をはらんでいます。

「あーやっぱりね」……。そんな一言にスクリーンショット画像を添えた投稿が2024年10月2日、X(旧ツイッター)で3万件以上の“いいね”を獲得しました。

 スクショ画像は先月、交際相手の女性に暴行を加えた容疑で逮捕された人気YouTuber男性のプロフィル。出身地欄の「福岡県××市」という項目に赤い下線が書き加えられています。

 Xではかねて「九州地方は男女差別が激しい」との言説が流布されており、上記の投稿は、今回の事件で逮捕されたYouTuberが九州出身だったことを強調するもの。このような事案に結びつけ、「さすが九州」を意味する「さす九」というネットスラングまで登場しました。

 デジタル大辞泉(小学館)によると差別とは「取り扱いに差をつけること。特に、他よりも不当に低く取り扱うこと」とあり、また国連の「世界人権宣言」第2条には「すべて人は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、国民的もしくは社会的出身、財産、門地その他の地位またはこれに類するいかなる事由による差別をも受けることなく(後略)」とあります。同様の定めは日本国憲法第14条「法の下の平等」にも明記されており、出身地をもって他人へのジャッジを下す行為が明らかな差別であることは論を待ちません。

 しかしX上では「自分もかつて九州の男にひどい目に遭わされた。同じ被害者が出ないよう注意喚起しているまでだ」といった趣旨の、開き直りとも取れる“反論”まで見られる状況です。

 このように、特定の属性を理由とした他者への差別感情をあらわにする事例は、ほかにも数多く見られます。例えば、保育園に通っていた経歴を表す「ホイ卒」というスラング。

 小学校就学までの幼児教育を担う幼稚園と、働く保護者に代わって乳幼児を預かる保育園(保育所)。その違いを捉えて、保育園に通っていた人は両親が共働きしなくては家計が回らなかった家庭の子、つまり幼稚園卒と違って、貧しく育ちの悪い生い立ちだとのニュアンスが込められています。

 男女雇用機会均等法が施行されて約40年、また男女平等やSDGsが盛んに言われるようになった現代においても、「女性が働きに出る」すなわち「家計が苦しい」という考えを持つ層は一定数いるようです。待機児童が社会的な問題になって十数年が経過した2024年現在においてもなお、です。

 他にも、スマートフォンの国内シェアの約7割をiPhoneが占めていることから、Android端末を使っている人は「変人で、周囲に合わせられないタイプだから婚活では避けろ」。携帯電話(スマホ)の番号が「090」から始まる人は「中年以上のジジイかババア」、いやむしろ、アプリ機能での連絡が主流になった今「そもそも番号なんて意識していること自体が年寄りの証拠」。「年寄りは老害」。「チビは攻撃的」。「性犯罪者のほとんどが男。つまり男は全員、犯罪者予備軍」。「DVで逮捕される男が多いのは、女が暴力を振るう男を好きだから」……など、枚挙にいとまがありません。

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 これらの言説を並べることで明らかになるのは、何らかのきっかけで、もしくは誰かの思いつきによって、どのような属性であっても容易に“被差別対象”になり得るということです。

 自身が被差別対象になって初めてその醜さに気付くのは、遅きに失するかもしれません。しかし今、露悪を競い合うようかのようにカジュアルに差別感情を披露し合うSNSについて、立ち止まりそのあり方を考え直すユーザーが増えることを願います。

(LASISA編集部)

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