中高年の慢性的な「浮腫(むくみ)」は黄色信号!むくみの予防方法と受診の目安【医師解説】

中高年の慢性的な「浮腫(むくみ)」は黄色信号!むくみの予防方法と受診の目安【医師解説】

高齢者によく見られる症状の1つ「浮腫(むくみ)」。動くことが少なくなってくるとむくみやすいから仕方ないと、スルーしていませんか? 実はむくみを放置して慢性化させてしまうと、思わぬ事態に陥ることもあるのです。そこで今回は、慢性的なむくみについて原因と予防方法を、きくち総合診療クリニック理事長・院長の菊池大和先生にお聞きしました。

教えてくれたのは…

監修/菊池大和先生(医療法人ONE きくち総合診療クリニック 理事長・院長)
地域密着の総合診療かかりつけ医として、内科から整形外科、アレルギー科や心療内科など、ほぼすべての診療科目を扱っている。日本の医療体制や課題についての書籍出版もしており、地上波メディアにも出演中。

むくみの基礎知識

むくみとはどんな状態なのか、むくみの仕組みと受診する目安などを紹介します。

浮腫(むくみ)とは

むくみは、体内部の不要な水分が皮下組織にたまってしまう現象のことです。人の血液循環を支えるポンプ機能を果たしているのが心臓ですが、むくみは心臓から遠い部分に起こりやすい傾向があります。

特に足の甲や膝下などの下肢は、重力がかかるため血液が十分に心臓に送り返されにくい部位。下肢の血液循環を補助するふくらはぎなどの筋肉が衰えていると、より水分がたまりやすくなります。高齢者で足のむくみを訴える方が多いのは、このためです。

むくみの主な症状

むくみは痛みがないからと放置しがちですが、実は高齢者の慢性的なむくみには、背後に重大な病気が隠れていることが多いのです。まずは以下のチェックリストで、むくみと同じタイミングで発現している症状がないか確認してみましょう。

<むくみのチェックリスト>
・血圧がいつもより20以上上がった
・1カ月で体重が1~2kg増加した
・靴下の跡がつく(時間がたっても消えない)状態が2週間以上続いている
・足を上げて寝てもむくみが改善しない
・尿量が減った
・歩いているときや寝ているときに息切れ・呼吸困難が起きる
・手足に加えて顔も腫れぼったくなってきた
・副作用としてむくみが出る薬(非ステロイド系抗炎症薬、ステロイド薬、漢方薬など)を内服している

血圧・体重の増加や、息切れ、呼吸困難、全身がむくんでいるなどの症状がある場合、肺気腫(はいきしゅ:肺や気管支に炎症が起こることで気道が細くなる病気)など命に関わる病気が原因になっている可能性もあるため、すぐにかかりつけ医へ相談するのがおすすめです。

チェックリストに当てはまるものがなかった場合も、2週間以上慢性的にむくみがあると、これから病気が見つかる恐れがあります。本人ではむくみの状態に気付かないこともあるため、高齢者本人だけでなく、周りの家族が体調の管理も兼ねて日々見守ることが大切です。むくみに気付いたら、悪化する前に早めにかかりつけ医にかかりましょう。

病気以外の原因によるむくみ

高齢者のむくみは、病気以外が原因となっている場合もあります。

慢性下肢浮腫(まんせいかしふしゅ)

病気以外の原因でむくみが発生している場合、高齢者に多いのが「慢性下肢浮腫」です。

長時間同じ姿勢が続くと、足元から心臓へと血液を送り出す筋肉が動かされません。そのため、下半身の血流が滞り血液中の余分な水分が血管外に漏れ出してむくみが発生します。

生活習慣によるむくみ

冷えや塩分過多、ストレス、筋力低下などの生活習慣からむくみが起こることもあります。高齢者は加齢により循環機能や排せつ機能などの低下が起き、足がむくむ場合が多いです。

病気が原因でなくても、むくみを放置すると症状が拡大・悪化したり、下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう:足の静脈に水分がたまって血管が拡張し、こぶのように膨れた状態)や深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう:下肢が圧迫されて血流が悪くなり、うっ血により血栓ができてパンパンに腫れる病気)などの病気に発展したりする場合があるため、油断は禁物です。

高齢者の場合、むくみから冷えを起こして筋肉が動きにくくなったり、歩きにくくなったりすることで、転倒リスクの増加や寝たきりの原因になることもあります。気になったら早めにかかりつけの医師に相談して、改善を目指しましょう。

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