陸上自衛隊に所属していた元自衛官の男性が、退職金の支払いを差し止める「不当な処分」をされて、精神的苦痛を受けたとして、慰謝料など約415万円の賠償を国に求めた訴訟で、東京地裁は10月2日、請求を棄却する判決を言い渡した。原告側は「極めて不当な判決」だとして控訴する方針。
●退職金の支払いを差し止める処分は取り消されたが・・・
判決などによると、男性は2016年3月から2019年5月まで給食班に配属されて、隊員向けの食事制度「有料喫食」の事前申請を取りまとめる業務を担当していた。
食事代は後日、給料から天引きされることになっているが、2019年3月、給食班の隊員の申込数が過少に申請されているという疑いが報告されて、調査がおこなわれた。
その結果、詐欺または窃盗にあたりうる疑いがあるとして、同年8月に退職していた男性は、退職手当と若年定年退職給付金の支払いを差し止められる処分を受けることになった。
男性はこの処分を不服として、同年に取消訴訟を起こした。処分から1年経過したことで、法律上、これらの処分が取り消されたことから、男性は請求を取り下げた。
しかし、「不当な処分」がされたことで取消訴訟を起こさなければならず、詐欺・盗人呼ばわりされたことなどで精神的な苦痛を受けたとして、男性は2022年6月、国に賠償を求める裁判を改めて起こした。
●原告男性「一方的な判決でびっくりした」
東京地裁の徳増誠一裁判長は、総務課に提出された一覧表に記載された申込数が、「基本的には出勤日すべてで有料喫食を申し込んだ」という給食班隊員4人の答申内容と一致せず、出勤日より少ない数だったという調査結果が「処分の根拠」になった指摘。
「出勤日=申込日」とする処分前提は不合理ではなく、答申が誤りだと示す資料もないことから「そのような答申を根拠としたことは十分、相当性が認められる」「そのような答申に依拠したことをもって裁量権の逸脱濫用があったとはできない」として、処分に違法性があるとはいえない判断した。
この日の判決後、原告の男性は東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いて「一方的な判決でびっくりした」と述べた。代理人の指宿昭一弁護士は「すべての出勤日において、有料喫食を申し込むとは限らない」として、答申の信用性と、それをもとに事実認定した判決に疑問を呈した。
配信: 弁護士ドットコム