「ずっとルーキーの気持ちです」【KEITAMARUYAMA 30th Anniversary×二階堂ふみクロストーク】

「ずっとルーキーの気持ちです」【KEITAMARUYAMA 30th Anniversary×二階堂ふみクロストーク】

1994年にデビューし、今年30周年を迎えたKEITAMARUYAMA。今回、30歳になったばかりの俳優・二階堂ふみさんに登場いただき、スペシャルなフォトシュートが実現。アーカイヴの衣装を身にまとって、お互いの30thアニバーサリーに、とびきりの祝福を—!   

「彼女みたいなスタンスの人が、これからの時代のリーダーシップを担っていくんだと思う」。敬太さんがそう話す、二階堂ふみさんとの熱量たっぷりなクロストーク。必読です!

ドレス[アーカイヴ・2017年秋冬]、グローブはケイタマルヤマ私物(共にケイタマルヤマ/ケー エム デザインスタジオ)

〝実直に丁寧に、モノ作りに向き合い

今思うのは次世代に何を残せるか"

——30周年を迎えたケイタマルヤマ、そして小誌の発売時に30歳を迎える二階堂さん。まずは互いの印象を聞かせてください。


 


 


敬太さん(以下、K):「そうなの、僕ら同い年(笑)。昔からふみちゃんのことはよく観ていたし、注目……していました(照)。個人的に、今と未来を結ぶ、ちょうどその真ん中にいらっしゃる方だなぁと感じていて。何かでご一緒できるタイミングを心待ちにしていたんです。今回、30周年の展覧会も開催するんですが、そちらのビジュアルにもどうしても出てほしかった。念願叶って、今すごく嬉しいです」


 


二階堂さん(以下、F):「そんなふうに思っていただけて、こちらこそ嬉しいです。私にとって、ケイタマルヤマは憧れのブランドで。生粋のシノワズリ好きとしては、好きな世界観がずっと変わらずそこにあるっていう感覚です。それに、敬太さんがデザインされたJALの制服(2013春〜2020春)が素晴らしくって!  着てみたくて着てみたくて(笑)、もう本当に大好きでした。だから今回、私が生まれた年にブランドがスタートしたと伺って、自分の歳と重ねて率直にすごいなぁと」


 


K:「そうだよねぇ。0歳が30歳になるって考えると、それだいぶすごいことですよね(笑)」


 


F:「90年代って、多様なカルチャーが育ったり、すごく面白い時代だったんですよね。そこからミレニアムを経ての今。さっき敬太さんがおっしゃっていた言葉をお借りするなら、ケイタマルヤマこそ、過去と今、未来をつなぐクリエイティブなブランドだなと思います」


 


 

多くの人に愛されているケイタマルヤマのシノワズリな世界観。ロマンティックなチャイナトップスは見るもの全てを魅了する。トップス[アーカイヴ・2000年春夏](ケイタマルヤマ/ケー エム デザインスタジオ)、ピアスはスタイリスト私物

 ——30周年という節目にあたり、敬太さんの今の心境を改めて伺いたいです。


 


K:「正直、振り返ったら30年経ってたって感じでしかなくて。え、もう30年、ビックリ!  の気持ちが大きい(笑)。ただ、20周年のときとは少し違っていて。何だろうな、これまで僕たち世代が見てきたもの、浴びさせてもらった色んなものを、生きているうちに(笑)、これから先の未来を生きる人たちにちゃんと伝えていかなきゃって。そういう思いが芽生えてきましたね」


 


——それは、還元していく、みたいな?


 


K:「うーん、そこまでおこがましくは考えてないんだけど。さっき90年代ってふみちゃん言ってたよね。それこそ僕は70、80年代を過ごした若いころから、いやむしろ幼少期のころから、TVや映画、雑誌のようなメディアを通して、上の世代の人たちの卓越したクリエイションをたくさん目にしてきて。そういう分野では、すごくいい時代を生きてきた世代だと思ってる。だからこそ、僕たちにはそれを伝える役割があるなって。もちろん自分たちが培ってきたことも含めて、ね。バトンを渡すって言ったら変かも知れないけど、そういうことができたらいいなと思っています」

繊細なフラワードレスがときめきを運んできてくれる。シャツ[アーカイヴ・1995年春夏]、ドレス[アーカイヴ・2001年春夏](共にケイタマルヤマ/ケー エム デザインスタジオ)、ピアスとシューズはスタイリスト私物

——二階堂さんも30歳、おめでとうございます。何か、心境の変化はありましたか?


 


F:「例えるなら、ルーキーの気持ちです(笑)」


 


K:「分かる分かる。ほんの2年くらい前まで僕もそうだった(笑)」


 


F:「え、本当ですか(笑)。何だろう、長く最前線でやってこられた方って、ずっとルーキーの気持ちを忘れない方が多い気がします。私が素敵だと思う大人って皆、怒られたり、何かを指摘されることをいとわないというか。自分を肯定する人だけを周りに置かず、辛辣な意見もちゃんと受け入れる懐を持っていて、新しい人との交流にも積極的。そういうことを拒否し始めると、途端にサビていっちゃうと思うんです」


 


K:「確かに。それは僕もめちゃくちゃ意識してる。だってまだまだ学びたいし知りたいし、あとやっぱり新しいことって楽しいじゃない。だからなるべく若い人たちとか、本音をぶつけてくれる人といるようにしてる(笑)」


 


F:「傷つくことを恐れてないというか、そういう姿勢でいられるのが素敵だなぁ」


 


K:「いや、恐れてはいるんですけど(苦笑)。まぁ、ビビりながらも、何とかね」

主役にぴったりのトラッドなスタイル。タータンチェックジャケット¥132,000、スカート[アーカイヴ・2021年秋冬]、トップスはケイタマルヤマ私物(全てケイタマルヤマ/ケー エム デザインスタジオ)、イヤリングとシューズはスタイリスト私物

——今回、過去のアーカイヴを交えて、ケイタマルヤマのタイムレスな魅力が浮き彫りになる撮影でしたが。


 


K:「今回みたいなタイミングで、昔のアーカイヴを引っ張り出してスタイリングしてもらって、ふみちゃんみたいな人が着てくれると、もう全く新しいモノになる。やっぱりファッションってそうあるべき。ときを経て楽しめるものだし、すごくパーソナルなものだと僕は思っていて。それを再確認できた気がします」


 


F:「すごいですよね。大事に作られているお洋服だから、長い年月を経ても、何ていうか、ちゃんと“生きてる”。今って、モノが軽視され過ぎていて、何でも変わりがきくっていう思考になり過ぎている気がして。現代のファッションの、そういう資本主義的な側面は苦手なんです。丁寧に作られたものや、作り手の方の思いが感じられるものはずっと“生きてる”ものだと思うし、生もの、なんですよね。鮮度がいい状態でいつまでも存在する」


 


K:「そのためにはやっぱりケアも愛情も必要だし、ね。たくさんモノを作る時代はとうに終わっているから、やっぱり丁寧に作られたものが愛されて残るんだと思うし、そういうものはまた新しく生まれるべきだとも思う」


 


F:「はい。そうあってほしいと思います」


 


K:「僕、デビューして最初のインタビューのとき、28歳の終わりくらいかな。“捨てられない服を作りたい”って話していたんです。日本の伝統文化のひとつでもある着物って、おばあちゃんからお母さん、そして娘、みたいに代々渡っていくじゃないですか。そういうモノ作りをしたいって、生意気にも答えていた(笑)」


 


F:「素敵なエピソード……」


 


K:「ありがとう(照)。でね、30年ブランドをやっていると、その成果みたいなものをリアルに体感できるシーンに直面するんですよ。例えば、セカンドユース。うちの若いコとかが、メルカリで見つけました!  って昔のケイタマルヤマを着ていたり。古着屋さんをのぞいたら『わ、ケイタマルヤマ売ってるじゃん!  上がる〜』なんてことも多々ある(笑)。そういうことが、丁寧にものを作ってきたご褒美なのかなと感じています(しみじみ)。僕、もともと自分のことクリエイティブだと思っていなくて。何ていうか、素直にキレイだなと思ったり、普通にいいなと思えるモノを作ってきたタイプで。実際そこがコンプレックスでもあったので、何だかなおさら、じんとしちゃいますね」

キラキラ&フワフワのチュールドレスは何歳になっても憧れ。ドレス[アーカイヴ・2019年秋冬](ケイタマルヤマ/ケー エム デザインスタジオ)、カチューシャ、ネックレス、バングル、ブレスレットはスタイリスト私物

Profile_にかいどう・ふみ/1994年生まれ、沖縄県出身。映画『ガマの油』(2009年)でスクリーンデビュー。その後も、映画『ヒミズ』(2012年)、『リバーズ・エッジ』(2018年)、『翔んで埼玉』(2019年)、『月』(2023年)、ドラマ「エール」(2020年)、「EyeLoveYou」(2023年)等に出演し、写真家としても活動。2024年2月27日より配信されているハリウッド制作ドラマ『SHOGUN 将軍』にメインキャストの一人として出演している。


 


Profile_まるやま・けいた/1965年生まれ、東京都出身。ファッションデザイナー。文化服装学院を卒業後、日本のアパレル企業で企画デザイナーを務め、独立。1994年に自身のブランド「ケイタマルヤマ」で東京コレクションデビュー、1997年にパリコレデビューを果たす。ミュージシャンやタレントのステージ衣装を手掛ける他、近年はJALの制服プロデュースなど活躍の場は多岐に渡る。

photograph:SAKI OMI[io] styling:YOKO MIYAKE

hair & make-up:AIKO TOKASHIKI model:FUMI NIKAIDO

interview & text:NAO MANITA[LIKECOME]

otona MUSE 2024年11月号より

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