首都高で車線ふさぎ、後続車を恫喝…止まぬ「あおり運転」トラブル 被害にあったらどんな請求ができるのか?

首都高で車線ふさぎ、後続車を恫喝…止まぬ「あおり運転」トラブル 被害にあったらどんな請求ができるのか?

首都高で車の通行を遮断するようにトラックが停まり、その運転手が外に出て、後続車に何か叫びながら暴れる——。9月、X(旧Twitter)に投稿された動画が拡散し、運転手が勤務していた運送会社が謝罪する事態となりました。

実際に動画を見ると、高速道路上でトラックの運転手がトラックで車線を塞ぎ、後続車のドアをむりやり開けようとして暴言を吐いたり、暴れたりしているように見えます。さらに両車線とも後続車両も通行できなくなっており、渋滞が発生しているようでした。

弁護士ドットコムニュースで、トラック運転手の刑事責任について記事を配信すると、大きな反響がありました。その中には、自分がこのような事態に巻き込まれた場合、このトラック運転手にどのような法的責任を問えるのか、と疑問を持つ人もいました。

そこで、民事ではどのような責任が問われる可能性があるのか検討してみたいと思います。

●民事上の責任として考えられること

まず検討したいのが、トラック運転手が絡んだ黒い自動車の運転手(直接の被害者と考えられるため、「被害者」とします)に対する請求です。

車を傷つけられた場合には、車の修理代等は請求できるでしょう。愛車の修理の間、代車が必要になった場合には、代車料もある程度(通常代車として必要と認められる金額の範囲で)賠償されると思われます。

また、被害者は、怒鳴られたり、窓越しに殴りかかられたりしているため、不法行為(民法709条)に基づく慰謝料請求(同法710条)も可能と思われます。

なお、弁護士を頼んだ場合には、弁護士費用も相当な範囲で損害賠償請求が可能です。

●後ろで待たされた人たちは、トラックの運転手に何か請求できる?

次に、黒い車の後ろで待たされた人たちに対する請求について考えます。

たとえば、

(1) 目的地への到着が遅れたことで生じた損害の賠償(例、大事な商談に間に合わず、商談が破談になったとか、面接に間に合わずに採用してもらえなかったとか)

(2) 長い間待たされたことで体調がおかしくなったことへの賠償(病院費用など)

(3) 慰謝料

などが考えられます。

(1)については、結論から言えば、損害賠償請求は非常に難しいと思われます。

待たされた人達が、トラックの運転手に対して損害賠償を請求する場合も、被害者と同じように、民法上の不法行為責任を追及することになります。

しかし、不法行為に基づく損害賠償の範囲は行為と相当因果関係のある損害に限定されます(民法416条、最判昭和48年6月7日)。今回のケースでは、この相当因果関係の範囲にあることの立証は非常に困難だと予想されるからです。

(2)の病院費用などは一見すると請求できそうなのですが、トラックの運転手による妨害のために具合が悪くなった、という立証は相当に難しいです。しかも金額もそれほど高くないでしょうから、現実的ではないでしょう。

(3)については、しばらく待たされてイライラした、という程度だと、慰謝料請求の対象となるほどの精神的損害が発生しているとは認められないと考えられます。

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