3、その他、年齢詐称が問題となるケース
ここからは、ありがちな年齢詐称のパターンごとに、年齢詐称をした人が問われる詐欺罪以外の犯罪や法律上の責任などについて解説します。
(1)アルバイト応募時の年齢詐称
年齢詐称をして採用された場合、採用先の会社から給料を受け取ることになります。
しかし給料は、「〇〇歳だから」という理由で支払われるものではなく、実際に労働したことの対価として支払われるものです。つまり、年齢自体は会社が給料を支払うという判断をする上での重要事項とはいえないでしょう。
したがって、仮に会社側が年齢について騙されていた(錯誤)としても、詐欺罪の欺罔行為があるとはいえず、錯誤によって給料を交付したわけでもないので、詐欺罪に問われることはないでしょう。
しかし、採用時に年齢詐称をしていたことが会社に判明した場合は、年齢詐称を理由に解雇されてしまうリスクがあります。
(2)インターネット上のアカウント取得時の年齢詐称
Webサービスなどのアカウントを取得する際に年齢詐称をしたとしても、特殊な場合を除き、年齢によって誰かから金品などを受け取るということはありません。
しかし、登録時の年齢詐称が発覚した場合、webサービスの利用規約違反に該当するのが通常です。
年齢制限に関する利用規約に違反すると、アカウントの削除や再登録の禁止などの措置を受ける可能性が高いでしょう。
(3)未成年者が成人と偽って取引をする場合の年齢詐称
未成年者が法律行為をする際には、法定代理人の同意が必要とされており(民法第5条1項)、法定代理人の同意がない場合には、法律行為を取り消すことができるとされています(同条2項)。
そのため、未成年者と取引をする相手方は、成人相手の場合とは異なる注意をもって取引に臨む必要があるのです。
このような理由から、業者によっては、未成年者相手の取引は行わないルールを独自に定めている場合があります。
こうした場合には、取引相手が未成年者だとわかっていれば、業者は商品を売ることはないわけです。
それにもかかわらず、未成年者が年齢詐称をして、自分が成人であると業者に誤信させて商品を購入した場合には、詐欺罪に該当する可能性があります。
そして、未成年者が自らを成人であると相手に信じさせるために詐術を用いた場合には、法律行為を取り消すことはできません(民法第21条)。
(4)男女交際における年齢詐称
男女交際において、相手からの好意を獲得したいなどの目的で年齢詐称をしたとしても、基本的にはプライベートな問題として、法律上の問題は発生しないことが多いでしょう。
ただし、無事相手と結婚できたとしても、後に騙されたと思った相手から、年齢詐称を理由に離婚を申し出られる可能性があるので注意しましょう。
(5)芸能人の年齢詐称
芸能人の年齢詐称も、基本的には法律上の問題が発生するケースは少ないと考えられます。
年齢詐称をしていたとしても、実害を被っているといえる人が存在しないことも多いからです。
また、芸能人を応援する人は、その芸能人の容姿・人柄などをはじめとした、非常に複合的な要素が組み合わさって成り立つイメージとしての芸能人を応援していると考えられます。つまり、一般にファンの人は、その芸能人を応援し、金品やプレゼント等を渡していたとしても、年齢のみを理由に財物の交付をしているという関係はないといえるでしょう。
もっとも、芸能人の年齢詐称が発覚した場合、その芸能人の評判が悪化し、仕事が減るなどの社会的制裁を受けることはあるかもしれません。
まとめ
年齢詐称は、年齢が財物を交付するかどうか判断する上で重要事項でない限りは、一般的には詐欺罪には該当せず、その他の犯罪に該当する可能性も低いと考えられます。
しかし、年齢詐称も相手を騙す行為であることには違いがないので、相手の信頼を裏切る行為です。年齢詐称は、発覚する可能性が高く、長い目で見ると、様々なデメリットが発生するものです。
安易に人を騙す行為である年齢詐称をしないことをおすすめします。
監修者:萩原 達也弁護士
ベリーベスト法律事務所、代表弁護士の萩原 達也です。
国内最大級の拠点数を誇り、クオリティーの高いリーガルサービスを、日本全国津々浦々にて提供することをモットーにしています。
また、所属する中国、アメリカをはじめとする海外の弁護士資格保有者や、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも当事務所の大きな特徴です。
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