隣の気配をなるべく感じないように過ごした
「ありがとうね」と言いながら男性は受け取ったのですが、そのときライターを持っていた友人の腕に触れてきたのを、伊田さんは見逃しませんでした。
「後で返すね」と言われたので、これ以上関わるのはごめんだと思った伊田さんは慌てて「私たちも使うので、ここで待っています」と返し、火をつけ終わった男性からライターを取り返しました。
「もう夜だし、話しかけられても無視していよう」と決めて、それからは低い音量で音楽を流して食事を楽しみ、隣の気配をなるべく感じないように過ごしたそうです。
夜になると、男が酒を持って乱入してきた
その夜のこと。
ふたりで焚き火を囲みながらあれこれと話していると、がさっと足音がします。
「時間は22時くらいで、周りの人たちは同じように火を起こしているか真っ暗でもう寝ている感じかで、お隣さんも声が聞こえないし、やっと静かになったねと友達と話していたところでした」
そんなときの物音で、ふたりともはっとしたそうですが、姿を現したのは隣のテントの男性。手にはビールの缶を持っていて、「さっきは助かったよ」と言いながらさも当たり前のようにふたりに近づいてきたそうです。
突然のことに伊田さんも友人も言葉をなくし、「椅子から立ち上がれないまま、黙って見ていました」と振り返ります。
男性はふたりの真ん中にどかっと座り、「これ、お礼のビール」と言いながら缶を置き「普段からここはよく来るの?」と一方的に話し始めます。
「……」
こちらはふたりいるとはいえ相手は男性、しかも堂々と発言する様子には威圧感があり、「さすがに怖くなりました。こんな図々しい人は見たことがなかったので、どう対応すればいいのかわからずパニックでしたね」と、体が動かなかったそうです。
配信: 女子SPA!