わざと“借り”を作って近づく口実を作る
すると、友人が「すみません、もう寝るところなので」と切り出し、立ち上がります。
それにつられて伊田さんも立つと、男性も慌てて腰を浮かせて「そうか。悪かったね」とぺこぺこ頭を下げながら帰っていきました。
「心臓がドキドキしたけど、すぐに帰ってくれて本当にほっとしました。友達を見たらすごく怒っていて、『何なのあの人、非常識すぎる。明日、管理事務所にクルマのナンバーを報告するわ』と言っていました。ビールはこっそり向こうの区画内に戻して、早々にテントに入りましたね」
伊田さんは友人の頼もしさに救われたと話しますが、男性があんな行動に出たのは「私たちがライターを貸したから」だと思っています。
「考えてみたら、何かを貸したら今度はそのお礼を口実にできるんですよね。あのとき断っていたら、あのまま接触することなく終われていたのかもしれません」
でも、断るのもまた勇気が要ることですよね。そもそも、伊田さんがこんな反省をしなくてはならないのがおかしい。まともな常識のある人なら、お礼にかこつけて女性だけの場に図々しく乗り込むようなことはしないはず。
一期一会の場でこそ、相手の気持ちを考えてほしい
お互いに見ず知らずの他人であり「今だけのつながり」を楽しめるのもキャンプの醍醐味ではありますが、それは双方が居心地がよいと感じてこそ成り立つ間柄です。
相手の意思を考えず確認することもなく、自分だけが満たされようとする身勝手な振る舞いは、キャンプのような一期一会の場でこそ控えるのが当たり前。女性にとって、自分が寝泊まりするテリトリーに見知らぬ男性が入ってくるのがどれほどのストレスであり恐怖なのか、軽々しく話しかける男性は知っておくべきです。
「おかしな人はすっぱりと相手をしないことが鉄則だと思いました。せっかくのキャンプだったのに、トホホに終わったのが悔しいです」と、伊田さんは改めて自分の身を守る態度について考えています。
<文/ひろたかおり イラスト/カツオ>
【ひろたかおり】
恋愛全般・不倫・モラハラ・離婚など男女のさまざまな愛の形を取材してきたライター。男性心理も得意。女性メディアにて多数のコラムを寄稿している。著書に『不倫の清算』(主婦の友社)がある。
配信: 女子SPA!
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