生前贈与において、税金はどれくらいかかるのでしょうか。
相続税をなるべく減らしたい場合、生前贈与を上手に活用すべきです。
ただ、生前贈与をするときには、本当に節税になるのかを確認してから各種の贈与税控除制度を利用することが重要です。
今回は、
生前贈与するときの贈与税計算方法
本当に得になる効果があるのか(=節税になるのか)をチェックする方法
について、べリーベスト税理士事務所の税理士が解説します。
今回の内容が相続税対策でお悩みの方のご参考になれば幸いです。
生前贈与に関して詳しく知りたい方は以下のページもご覧ください。
1、生前贈与は税金対策のために行われる
生前贈与を行う目的は、言うまでもなく「相続税対策」です。
生前贈与によって遺産を減らすと、将来発生する相続税額を減らすことができるからです。
ただ、生前贈与によって高額な贈与税が発生すると、相続税を支払った方が得になってしまう可能性もあります。
そこで、生前贈与をするときには、生前贈与する場合としない場合を比較して、どちらの方が、税金(贈与税+相続税)が安くなるのかを検討する必要があります。
つまり、以下のような状態になっているならば、生前贈与をするメリットがあると言えます。
生前贈与しない場合の相続税の金額>生前贈与した場合の贈与税の金額+相続税の金額の合計
2、生前贈与の税金の計算方法
次に、生前贈与をしたときの贈与税計算方法をご説明します。
(1)生前贈与の税金の計算方法
①贈与財産を評価する
贈与税を計算するときには、まずは贈与財産の評価を行います。
現金や預貯金などの資産であれば、そのままの金額が評価額となりますが、株式や不動産などの場合には、決まった方法による贈与税評価が必要です。
特に不動産の場合、市場価格とは大きく異なる評価方法となるので、路線価や固定資産評価額を使って正確に計算しましょう。
②贈与税の控除制度を適用する
贈与財産を適正に評価できたら、その金額に、各種の贈与税控除制度を適用します。
たとえば、贈与税の基礎控除を利用して暦年贈与をする場合には、110万円を引きますし、相続時精算課税制度を利用する場合には2,500万円まで控除することができます。
居住用不動産の購入資金贈与特例を利用するなら700万円または1,500万円まで引くことができますし(住居のタイプと、新築等にかかる契約日がいつかにより決まります)配偶者間の贈与特例を利用するなら2,000万円までを引くことができます。
居住用不動産の購入資金贈与特例や配偶者間の贈与特例などを利用する場合、暦年贈与または相続時精算課税制度のどちらかを併用することができるので、ケースに応じてどのような控除制度を利用するのか、しっかりと検討することが重要です。
③贈与税の税率を当てはめて計算する
このようにして贈与税の課税対象金額を計算したら、その金額に、それぞれのケースに応じた贈与税の税率をかけ算して、贈与税の金額を算出します。
贈与税の税率は、親や祖父母などからの直系尊属から子どもや孫などの直系卑属に対する贈与のケースとその他のケースで異なります。
直系尊属から直系卑属に対する贈与の場合、他のケースよりも贈与税率が低くなっています。
これは、政府としても、できるだけ多くの資産を早期に次の世代に受け渡したいと考えているためです。
それぞれのケースにおける贈与税率は、以下の通りです。
「親や祖父母から20歳以上の子供や孫へ贈与するケース」
贈与税の課税対象額
税率
控除額
200万円以下
10%
なし
400万円以下
15%
10万円
600万円以下
20%
30万円
1,000万円以下
30%
90万円
1,500万円以下
40%
190万円
3,000万円以上
45%
265万円
4,500万円以下
50%
415万円
4,500万円以上
55%
640万円
「一般的な贈与のケース」
贈与税の課税対象額
税率
控除額
200万円以下
10%
なし
300万円以下
15%
10万円
400万円以下
20%
25万円
600万円以下
30%
65万円
1,000万円以下
40%
125万円
1,500万円以上
45%
175万円
3,000万円以下
50%
250万円
3,000万円以上
55%
400万円
以上によって計算された金額が、そのケースにおいてかかる贈与税の金額となります。
(2)主な非課税制度
生前贈与を行うときには、各種の贈与税の非課税制度を利用すべきです。
たとえば、以下のような制度を利用することができます。
①贈与税の基礎控除
贈与税には、毎年110万円までの贈与分には贈与税がかからなくなる基礎控除があります。
②相続時精算課税制度
直系尊属から直系卑属に生前贈与をするときに、最大2,500万円までの贈与分が非課税になる制度です。
ただし、相続発生時に遺産に足されて、まとめて相続税が課税されるので、無税になるわけではありません。
③居住不動産購入資金贈与特例
親や祖父母が子どもや孫に居住用不動産購入資金を贈与するとき、ケースに応じた控除を受けることができます。
④配偶者間の贈与税控除特例
20年以上連れ添った配偶者間で居住用不動産を贈与するとき、2,000万円までの贈与分に対する贈与税が無税になります。
⑤教育資金贈与特例
親や祖父母が子どもや孫に教育資金を贈与するとき、最大1,500万円までの贈与分が無税になります。
⑥結婚子育て資金贈与特例
親や祖父母や子どもや孫に結婚・子育て資金を贈与するとき、最大1,000万円までの贈与分が非課税になります。
配信: LEGAL MALL