非課税となる贈与税の仕組みと6つの非課税贈与の方法

非課税となる贈与税の仕組みと6つの非課税贈与の方法

非課税となる贈与税ですが、なぜ非課税となるのか仕組みをご存知でしょうか。

相続をするとき、なるべくなら相続税を支払いたくないものですが、そのためには「生前贈与」が非常に有効です。

生前に財産を次の世代に移転してしまったら、その分相続税の課税対象財産が少なくなり、相続税が減額されるからです。

ただし、生前贈与をすると、贈与税がかかることが問題です。

効果的に節税をするためには、贈与税の非課税枠を上手に利用する必要があります。

以下では、

贈与税非課税となる生前贈与の制度
具体的な手続き方法

について、べリーベスト税理士事務所の税理士が解説していきます。相続税対策でお悩みの方のご参考になれば幸いです。

生前贈与の税金について詳しく知りたい方は以下のページもご覧ください。

1、非課税になる贈与税はなぜ?|そもそも生活費としての贈与なら贈与税はかからない!

贈与税は、他者に財産を譲り渡したときに発生する税金です。

親子間や兄弟間、配偶者間であっても、財産を移転すると贈与税がかかります。

しかも、贈与税の税率は最高55%となっており、かなり高額です。

ただし、一部贈与税がかからない贈与があります。

それは、生活費としての贈与です。

たとえば、一家の大黒柱となっている夫が妻の生活費を出してあげても贈与税はかかりませんし、親が子どもを扶養するためにお金を出しても贈与税は発生しません。

学費や塾などの教育費についても同じです。

ただし、非課税となるのは「必要な範囲」のもののみです。

生活に必要な範囲を超えて余分なお金を贈与すると、贈与税が発生してしまいます。

たとえば、親が子どもの下宿代を負担するとき、毎月10万円程度であれば贈与税はかかりませんが、毎月100万円なら贈与税が課税されるでしょう。

また、借金苦により支払い不能状態となっているケースにおいて、借金を肩代わりしてあげた場合にも、贈与税はかかりません。

ただしこの場合、本人(受贈者)が債務超過で支払いができない状態であることが条件です。

余裕があるのに借金を肩代わりすると、肩代わり分を贈与とみなされるので、注意が必要です。

親や祖父母が子どもや孫に財産を贈与するとき、生活費を超える範囲になると、基本的に贈与税が課税されます。

贈与税対策をとらないまま、やみくもに贈与を行うことには危険が大きいです。

2、非課税となる6つの贈与の方法と金額

ただし、贈与税にはさまざまな非課税制度が用意されています。

以下で、順番にご紹介していきます。

(1)基礎控除を利用した暦年贈与 毎年110万円

①制度の概要

まずは、贈与税の基礎控除を利用した暦年贈与の方法があります。

贈与税には、毎年110万円までの贈与には贈与税がかからないという、基礎控除がもうけられています。

110万円というのは、「贈与を受ける側」を基準にカウントします。

そこで、この方法を使って複数の人に110万円以内の贈与を継続すると、多額の財産を無税で贈与することが可能となります。

②非課税金額

非課税になる金額は、毎年110万円です。

これは、贈与を受ける側の人についてカウントされるので、何人を相手に贈与をしてもかまいません。

また、贈与の相手方にも制限がありません。

たとえば、子ども2人と孫4人の合計6人に毎年110万円ずつ贈与をすれば、10年後には6,600万円を無税で贈与できます。

③非課税となる具体的条件

基礎控除は、当然に適用されるものなので、特に条件はありません。

ただし、後に贈与を否定されないためには、毎年贈与契約書を作成し続けるなどの対策が必要です。

(2)相続時精算課税制度 最大2,500万円

①制度の概要

次に、相続時精算課税制度という特例があります。

これは、親や祖父母が子どもや孫に贈与をするとき、最大2,500万円までの贈与分が非課税になる制度です。

贈与の対象物に限定はなく、預貯金でも現金でも不動産でも貴金属、車などの動産でも適用を受けられます。

また、制度が適用される期間にも制限がなく、数年にわたって贈与を続けても、2,500万円に達するまでの間であれば、すべて贈与税が無税となります。

ただし、この制度によって支払いを免れた贈与分については、相続時に遺産に加算されるので、まとめて相続税が課税されます。

②非課税金額

相続時精算課税制度による非課税額は、最大2,500万円です。

被相続人が亡くなるまでの贈与分に適用されます。

2,500万円を超える分に対しては、一律で、20%の贈与税が課税されます。

③非課税となる具体的条件

相続時精算課税制度を利用するためには、最初に贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、贈与税の確定申告をする必要があります。

(3)配偶者に対する居住用不動産または資金贈与 最大2,000万円

①制度の概要

配偶者に対する居住用不動産や居住用不動産の資金を贈与した場合には、最大2,000万円までの贈与分が無税となります。

不動産そのものを贈与してもかまいませんし、不動産の購入資金を贈与してもかまいません。

ただし、この特例を利用できるのは、同一の夫婦の場合には1回限りです。

②非課税金額

配偶者に対する居住用不動産または資金贈与特例によって無税となる範囲は、最大2,000万円です。

この制度は贈与税の基礎控除(110万円)と併用できるので、実際には最大2,110万円までの贈与分を無税とすることができます。

③非課税となる具体的条件

この特例の適用を受けられるためには、以下の条件を満たしている必要があります。

婚姻年数が20年以上の夫婦 → 婚姻年数20年未満の場合、制度の適用を受けられません。
この制度を適用するのが始めてであること →    同一の夫婦間で湖の制度の適用を受けられるのは1度切りです。
翌年贈与税の申告をすること → たとえ贈与税が発生しないケースであっても、制度の適用を受けるためには贈与税の申告が必要です。
翌年3月15日までに実際に購入した(贈与された)不動産に居住を開始すること → 制度の適用を受けるためには、実際に対象の不動産に居住することが必要です。

(4)教育資金贈与 最大1,500万円

①制度の概要

親や祖父母が子どもや孫に対し、小中学校、高校、大学の学費などの教育費を贈与するときに適用される特例です。

学校だけではなく、塾や習い事、スポーツクラブなどの費用についても適用を受けることができます。

贈与は一括で行い、その後、子どもや孫(受贈者)が必要に応じてお金を出金して利用します。

この制度の適用を受けられるのは、受贈者が30歳になるまでの間です。

2021年3月31日までの期限付き措置です。

②非課税金額

教育資金贈与の特例によって非課税となるのは、最大1,500万円です。

ただし、塾や習い事などの学校外の支払い分については、500万円が上限となります。

受贈者が30歳になるまでに使い切れなかった分については通常の税率で贈与税が課税されます。

③非課税となる具体的条件

この制度の適用を受けるためには、子どもや孫が30歳未満である必要があります。

まずは子どもや孫名義で信託銀行に口座開設して、その口座宛に、一括で資金を振り込みます。

その後、子どもや孫は必要に応じてお金を出金しますが、その都度、領収証を信託銀行に提出する必要があります。

(5)結婚・子育て資金贈与 最大1,000万円

①制度の概要

子どもや孫に対する教育式贈与と似た制度で、結婚・子育て資金贈与の特例もあります。

これは、子どもや孫の結婚資金や子育て資金を贈与するときに、最大1,000万円までが非課税になる制度です。

子どもや孫が50歳になるまで利用することができます。

2021年3月31日までの期限付き措置です。

②非課税金額

この制度によって非課税になるのは、子育て資金の場合には1,000万円まで、結婚資金の場合には300万円までです。

また、受贈者が50歳になったときに使い切れなかった分については、通常通りの税率で贈与税が課税されます。

③非課税となる具体的条件

この制度の適用を受けるには、受贈者が20~49歳である必要があります。

教育資金贈与のケースと同様、まずは信託銀行に受贈者名義の口座を開き、そこに一括で資金を振り込む方法で贈与をします。

その後、受贈者は必要に応じて資金を出金し、金融機関に領収証を提出します。

(6)直系尊属から直系卑属に対する居住用不動産の資金贈与 最大3,000万円

①制度の概要

親や祖父母などの直系尊属から子どもや孫に対し、居住用不動産の資金を贈与するときの贈与税特例もあります。

この場合、住宅の種類や消費税の税率に応じて、異なる金額の贈与税控除を受けることが可能です。

②非課税金額

非課税となる金額は、以下の通りです。

● 消費税を10%として計算

住宅用家屋の新築等にかかる契約の締結日
省エネ等住宅
左記以外の住宅

令和2年3月31日まで
3,000万円
2,500万円

令和2年4月1日~令和3年3月31日
1,500万円
1,000万円

令和3年4月1日~令和3年12月31日
1,200万円
700万円

③非課税となる具体的条件

直系尊属から満20歳以上の直系卑属へ贈与すること
受贈者の所得が2,000万円以下
過去に同じ特例を受けていないこと
住宅の売主や建築業者が配偶者や親族ではない
贈与を受けた翌年の3月15日までに実際に住宅を取得して、居住を開始するか、居住することが確実である
住宅の床面積は50㎡以上240㎡以下、その半分以上を居住用とする
新築または築20年以内(耐火建築物の場合には築25年)の建物であるか、一定の耐震基準を満たしている住宅である

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