相続財産の評価を適切に進するために必要な6つの知識

相続財産の評価を適切に進するために必要な6つの知識

3、土地の評価方法

土地は「前所有者が生前にどのような形で土地を使っていたか」によって相続税評価の方法が変わります。

以下、具体的なケースをいくつか紹介します。

(1)自分で使っていた土地の評価方法

もっとも原則的なケースが、亡くなった人が自分で住む家を建てるために土地を使っていた場合です。

この場合、「路線化方式」または「倍率方式」によって土地の相続税評価額を計算します。

市街地にある土地は路線価方式で、郊外にある土地は倍率方式で計算するケースが多いでしょう。

それぞれの方式の計算方法は以下のとおりです。

路線価方式による土地の相続税評価額=路線価×土地の面積
倍率方式による土地の相続税評価額=固定資産税評価額×倍率(通常1.1倍)

路線価というのは、国が決めた土地の値段のことです。

その名の通り道路に面した土地については路線価がついていることが多いです。

土地の面積については、登記簿等を使って確認することになります。

路線価がついている土地については、路線価方式を用いて相続税評価額を計算するのが原則ですが、地方では路線価が設定されていない土地も少なくありません。

そうしたケースでは、市区町村が決めている固定資産税評価額を使って相続税の評価額を計算します。

固定資産税評価額は、毎年市役所から送られてくる固定資産税の納付書などをみると確認することができます。

ただし、固定資産税評価額は通常は路線価よりも金額が小さくなりますので、公平を期すために「倍率」を掛け算します。

多くのケースでこの倍率は1.1倍です。

結果的に、路線価方式による相続税評価額と、倍率方式による相続税評価額とはほぼ同じ金額水準になります。

(2)賃貸建物を建てるために使っていた土地の評価方法

他人の所有物である建物を建てるために、故人が自分の土地を貸していたという場合には、その土地の相続税評価額は少し安く見積もることができます(つまり、相続税の負担は小さくなります)

具体的な計算式は以下のとおりです。

賃貸建物を建てるために使っていた土地の評価方法=自用地としての土地評価額×(1−借地権割合)

「自用地としての土地評価額」というのは、自分が住むために使っていた土地という意味です。

これはすでに見たように路線価方式または倍率方式によって計算します。

借地権割合とは、自用地に設定していた借地権の土地割合のことです。

具体的な割合は国税庁のホームページを見ると確認することができます。

路線価の横にアルファベットでA〜Gまでの記号が記されているのが借地権割合です。

Aなら借地権割合90%、Bなら80%…というように、10%区切りで表示されています。

例えば、路線数の表示が「360C」となっているなら、これは「1平米あたりの路線価は36万円。借地権割合は70%」ということを意味します。

仮に、土地の広さが100平米だったとしたら、36万円×100平米×(1−70%)=1080万円というように、相続税評価額を計算することができます。

(3)借地権の評価方法

相続財産に借地権が含まれる場合には、その借地権に対しても相続税が課税されます。

借地権とは、土地を所有する権利ではなく、他人から土地を借りる権利です。

他人から借りている土地に建物を建てているという場合に、その使用している土地には借地権が設定されているケースが多いです。

借地権の相続税評価額は、以下の計算式で計算します。

借地権の相続税評価額=自用地としての土地評価額×借地権割合

自用地としての土地評価額(路線価)や、借地権割合は上でも見たように国税庁のホームページで確認できます。

(4)小規模宅地等の特例とは?

相続財産に宅地が含まれる場合、「小規模宅地等の特例」という相続税軽減措置を受けられる可能性があります。

ここでいう宅地とは、「住宅を建てるために使っている土地」のことです。

故人が自分で住むための建物を建てていた場合だけでなく、賃貸アパートなどを建てるために土地を使っていた場合も含みます。

個人事業主として事業用の建物を建てるために土地を使っていたケースでも適用できます。

小規模宅地等の特例は、その名の通り「小規模な宅地」についてのみ適用される税軽減措置ですので、適用される土地の広さに制限があります。

例えば、自分で住むために使っていた土地の場合は330平米までです。

小規模宅地等の特例を適用すると、宅地の相続税評価額を最大80%減額してもらうことができます。

1億円の価値がある土地であれば、2000万円の土地として相続税を計算することができるということです。

必然的に、小規模宅地等の特例を適用できる土地に対する相続税課税額は非常に小さくなります。

小規模宅地等の特例は非常に税軽減効果の大きい特例といえますが、適用要件がかなり複雑になっています。

利用するための詳しい条件等については、専門の税理士に相談するようにしてください。

4、建物の評価方法

建物の相続税評価額は、原則として「固定資産税評価額」そのままの金額となります。

ただし、建物についても、土地と同様に前所有者が生前にどのような用途で建物を使っていたかによって評価方法が変わることがあります。

(1)自分で住んでいた建物の評価方法

前所有者が自分で住んでいた建物の評価方法は、原則通り「固定資産税評価額」となります。

自分で住んでいた建物の相続税評価額=固定資産税評価額

固定資産税評価額は、固定資産税の金額を計算するときに市区町村が用いている建物の価格のことで、固定資産税の納付書に記載されています。

(2)他人に貸していた建物の評価方法

賃貸物件として他人に貸して家賃を受け取っていた建物については、以下の計算式によって相続税評価額を計算します。

他人に貸していた建物の相続税評価額=固定資産税評価額×(1−借家権割合×賃貸割合)

相続税を計算する際には借家権割合は30%と決まっています。

また、賃貸割合とは「相続税評価額を計算する時点で、実際に入居者がいる部屋の割合」のことです(厳密には「実際に入居者がいる部屋の床面積の割合」です)

すべての部屋が満室であれば、賃貸割合は100%、10室中8室が埋まっているなら賃貸割合は80%です。

空き部屋が多くなると、その分だけ相続税評価額は高くなる仕組みとなっています。

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