不動産の相続税・これだけは理解しておきたい5つのポイント

不動産の相続税・これだけは理解しておきたい5つのポイント

3、不動産相続税の特例とは〜小規模宅地の特例

「小規模宅地の特例」とは、不動産相続税に関係する特有の特例です。

本項ではその内容を詳しく見ていきましょう。

(1)小規模宅地の特例とは

小規模宅地の特例とは、簡単にいえば「住宅に使っている土地(宅地)の相続税評価額を最大で80%減額してもらえる特例」です。

被相続人の自宅に限りません。被相続人の事業用宅地、賃貸物件の宅地も対象になります。

①被相続人等の居住の用に供されていた宅地等(「特定居住用宅地等」)

限度面積330㎡で最大80%の減額が可能です。

該当するものは概ね次のような要件です。

被相続人の居住の用に供されていた宅地:取得者が配偶者、同居の親族など
被相続人と生計同一の親族が住んでいた土地:取得者が配偶者、被相続人と生計同一の親族などです。

上記以外の場合でも適用される場合がありますが、詳細は省略します。

②被相続人等の事業用の宅地(特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等)

事業というのは所得税の事業所得になる場合です。八百屋や料理屋など「自分の店」を持っている場合、と考えていただければ良いでしょう。

その事業を相続人が継承する場合に適用される、と考えてください。

限度面積400㎡、最大80%の減額が可能です。

③被相続人等の貸付用の宅地(貸付事業用宅地等)

被相続人等の不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業等の用に供されていた宅地です。

②と同様に相続人がその事業を継承する場合に適用されます。

限度面積200㎡で最大50%の減額が可能です。

(2)小規模宅地の特例の計算式〜具体例

居住用宅地の例をご紹介します。

330㎡は100坪です。一般の市民の住宅なら丸ごと適用できる場合も多いでしょう。

【ケース1】

もとの宅地の評価額:1億円
地積:200㎡
小規模宅地等の特例適用後の宅地の評価額:2,000万円(減額割合80%フル適用)

【ケース2】

もとの宅地の評価額:4,000万円
地積:400㎡
小規模宅地等の特例適用後の宅地の評価額:1,360万円

(4,000万円-4,000万円×330㎡/400㎡×80%)

この特例の適用を受けるためには、原則として相続税申告時に遺産分割が完了していることが必要です。

(参考)国税庁

No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

4、不動産の相続税が払えない場合の対処法

(1)相続税が払えないとどうなる?

相続税の申告期限までに申告しても、税金を期限までに納めなかったときは、利息にあたる延滞税がかけられたり、最終的には国家に財産を差押えられ没収されることがあります。

(2)払えない場合の対処法

相続税が払えない場合の対処方法は、概ね次の通りです。

ここでは、相続開始後に相続税が払えないとわかった場合の対策を簡単に述べます。

相続税の延納:一定の要件のもと最大約20年間の分割払いが認められます。
相続税の物納:延納でも相続税を払えない場合には物納が認められることがあります。
相続財産の売却:遺産分割協議を整えた上で相続財産を売却して納税資金を作るのも一つの方法です。
金融機関からの借り入れ:金融機関などから相続税納付資金を借り入れて納付する方法です。
遺産分割協議がまとまらない場合:遺産分割協議がまとまらないため相続税を払えない場合なら、納税資金分についてだけ一部遺産分割協議を先行させるとか、法定相続人が自分に認められる分の払い戻しを受けて納税する、といったことも選択肢です(2019年7月施行の民法相続編改正により、各相続人の相続分の3分の1、1金融機関あたり150万円までの払い戻しが可能になりました)。
最後の選択肢として相続放棄ということも考えなければなりません。放棄の期限(自分にとって相続開始を知ってから3ヶ月以内)に注意してください。

相続開始前に準備する方法も含めて、詳細なまとめは、次の記事を参照してください。

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