離婚後の子供の名字を変えない方法とは?メリットやデメリットも解説

離婚後の子供の名字を変えない方法とは?メリットやデメリットも解説

3、離婚後に子供の苗字を変えないデメリット

離婚後に子供の苗字を変えなければ何も問題はないのかというと、そうではありません。

苗字を変えなければ、以下のデメリットを受けることを知っておきましょう。

(1)子供と母親が違う苗字になる

離婚と同時に、母親は旧姓に復します。

第七百六十七条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。

引用元:民法

一方、子供の苗字は父親の姓のままなので、母親と自分の苗字が違うことを気にして、それが子供にとって精神的負担となってしまうことがあります。

子供が小さい場合は、学校や習い事で必要な書類などに母親と子供の名前を書く必要があることも多いでしょう。

そんなとき、母親と子供とで苗字が異なれば、やはり子供にとっては違和感があったり寂しさを感じたりする可能性があります。

その書類を周りの子どもたちに見られた場合には、子供がからかわれたり虐められたりするおそれもあります。

(2)子供と母親の戸籍が別になってしまう

子供の苗字を変えず、父親の戸籍のままにしておくと、母親とは戸籍が別になってしまいます。

戸籍が別になっても、日常生活における支障は何もありません。ただ、父親の戸籍の所在地から遠方に母親と子供が引っ越した場合、子供の戸籍謄本を取り寄せるときに手間がかかります。戸籍謄本の取り寄せは郵送でも可能ですが、時間、費用がかかってしまうことがネックとなるでしょう。

戸籍謄本を取り寄せる機会はそう多くはないかもしれませんが、パスポートの申請や結婚、相続をするときなど、誰もが一生で何度かは取り寄せるものです。

ただ、マイナンバーカードを取得していれば、最寄りのコンビニなどで戸籍謄本を受け取ることができる自治体もあります。

今後、マイナンバーカードが普及するにつれて、そのような自治体が増えてくるはずですので、このデメリットは減少していくでしょう。

なお、離婚後に元妻は実家の戸籍に戻ることもできますが、子供もその戸籍に入れることは原則としてできません。なぜなら、戸籍とは夫婦と未成年の子との二世代で構成されるものであり、孫を入れることはできないからです。

どうしても実家の戸籍に子供を入れる場合は、祖父母と子供とが養子縁組をする必要があります。

離婚後に子供を母親の戸籍に入れるためには、母親が自分を筆頭者とした新しい戸籍を作り、そこに子供も入れるのが一般的です。

4、離婚後、母親も苗字を変えないことは可能か

ここまで、離婚後に母親が旧姓に戻ることを前提にお話を進めてきました。

母親も離婚後に苗字を変えないことができれば、母親と子供が同じ苗字を名乗ることができます。

「1(2)離婚後に子供の苗字を母親の旧姓に変えたい場合は?」で戸籍と苗字はワンセットであることをご説明しました。母親(元妻)において、戸籍が変わっても苗字はそのままにしておくことは可能なのでしょうか。母親だけ旧姓に戻ることによって母子で苗字が異なると、特に子供が小さければ何かと不便も生じ得る可能性もあるため、知りたいところでしょう。

(1)離婚後、母親(元妻)も苗字を変えないことは可能

離婚後、母親(元妻)は届出をすれば苗字を変えないことも可能です。

第七百六十七条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。

2 前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。

引用元:民法

離婚してから3ヶ月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることで、離婚の際に称していた氏、つまり子供と同じ「父親(元夫)の苗字」を名乗ることができます。

離婚によっていったんは旧姓に戻りますが、この届出を離婚届と同時に行えば、離婚後もそのまま元夫の苗字を名乗り続けることができるのです。

(2)「離婚の際に称していた氏を称する届」をする

上記の届出をするには、「離婚の際に称していた氏を称する届」を本籍地または所在地の市区町村の役場へ提出しましょう。

この届出には家庭裁判所の許可は不要で、届出書を提出するだけで婚姻中の苗字を名乗ることができるようになります。届出書を提出する際には、戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)と届出人の印鑑が必要になります。

ただし、本籍地の役所に届け出る場合は、戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)は不要です。

届出書の様式は、多くの自治体でホームページからダウンロードして使用できるようになっています。

一例として、東京都江東区のダウンロードページをご紹介しておきます。

参照:江東区|離婚の際に称していた氏を称する届

様式は全国共通ですが、届出先があらかじめ印字されているものをホームページに掲載している自治体もあるので、届出先の役所またはホームページから入手するようにしましょう。

(3)通称名とすることも可能

上記の届出をせず、離婚によって母親(元妻)の戸籍上の苗字が旧姓に戻っても、日常生活や仕事において「通称名」として婚姻時の苗字を名乗ることはできます。

学校や習い事などで母親が婚姻時の苗字を名乗ることで子供にかかる精神的に負担を回避することができますし、世間体も整えることができるでしょう。

ただし、あくまでも通称名に過ぎませんので、健康保険証や銀行口座には本名である母親の旧姓が記載されることにご注意ください。

また、実印が必要な場面でも旧姓を使用し、旧姓の実印を使用する必要があります。

婚姻時の姓での印鑑届出は廃止されていますので、新たに旧姓で印鑑届出をしておきましょう。

関連記事: