そもそもルッキズムを流布するのは“誰”なのか
Dove(ダヴ)の渋谷駅構内広告が批判を浴びたことに端を発して、SNSでは再び「ルッキズム」の問題がしきりに議論されています。同広告に対しては、その意図に反して「『美の基準』を世間に流布する結果になっている」といった指摘が相次ぎましたが、「ではその『美の基準』=ルッキズムを日頃押し付けているのは“誰”なのか」という点を検証する声が次々と上がっています。
女性から女性へ… はびこる外見批判と中傷のひどさ
同広告は10月11日の「国際ガールズデー」に併せて展開されたもので、SNS上に見られる「画一的な美の基準」(同社)に異を唱えようという趣旨。「中顔面6.5cm」「遠心顔/求心顔」「出目」など、昨今SNSで多く用いられる“美しい顔立ち”の特徴に削除線を引き、「カワイイに正解なんてない」とのメッセージを付記しています。
これに対してX(旧ツイッター)では、女性ユーザーたちから「中顔面長い、遠心・求心顔、奥目はかわいくないってことを逆に発信している」との批判が多数寄せられ“炎上”騒ぎに。また、「ダヴの広告もだけど、ルッキズムってなんで女性にしか向けられないの? (男性たちは)自分たちにルッキズムが向かないのをいいことに女性の容姿ジャッジを繰り返している」と、男性への不満をあらわにした趣旨の投稿には4万件以上もの“いいね”が集まりました。
一方で男性ユーザーたちからは、「ルッキズムにこだわり、あまつさえ他人に外見批判を向けるのはむしろ女性たち自身では?」との声が上がっています。
前述の「ルッキズムは女性にしか向かわない」としたユーザーは、同じ投稿の中で「この国のジャガイモ(男性)たちを律した方がよいのでは」とまさにルッキズムと取られかねない発言をしているほか、別の女性ユーザーは「(オタク男性が多いとされる)秋葉原に『鏡見た?』とか『風呂入った?』とかの広告を貼れ」などと投稿し、こちらも6万件近い“いいね”を集めています。
「ルッキズムは女性が作り出しているのに、なぜか男のせいにされる」――。男性たちがこのように発信する背景には、かねてXでは、女性ユーザーが別の女性ユーザーに対して向ける中傷的な言葉を掛けるケースが相次いでいることがあります。
自身が考える“美の基準”に合致しない外見を表す「芋」という用語を用い「なんで芋女って自信満々なの?」と評したり、「自己肯定感の高さがうらやましいな」と揶揄したり、「こういう服装してるの芋オタクしかいない」と嘲笑したりといった投稿は、Xユーザーであれば一度は見掛けたことはあるでしょう。また、ふくよかな体型の女性が自身の画像をアップすると「まず痩せろ。話はそれからだ」などとコメントが付いたり、「求心顔って生理的にムリ」とつぶやいたりと、SNSという匿名空間では女性が女性にルッキズムの中傷を向ける例は1件や2件ではありません。
こうした状況を捉えて男性ユーザーたちが「一人でコンプレックスをこじらせる分には知らないけど、自分のルッキズムを振りかざして他人を攻撃するのは害でしかない」と指摘する場面も近年増えてきていす。
また、今回の広告に対して声を上げた女性の中に、自身の整形歴などを明かしているユーザーが少なからずいたことから、「結局は『ルッキズムの加害者が(ダヴの広告により)その加害性を指摘されてパニクった』に尽きる(中略)あの広告は商業的には失敗だろうけど反ルッキズム的には大成功まである」と発信するインフルエンサー的男性アカウントも現れ、同広告について「ルッキズム用語を広める形になったのは良くない」一方で、用語を広める行為を「今一番やっているのは誰か?」という問題点を投げ掛けました。
「カワイイに正解なんてない」。ダヴの発信したメッセージが言葉の意味そのままに受け止められる社会。それが訪れるには、もう少し時間を要するのかもしれません。
(LASISA編集部)
配信: LASISA
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