東京會舘の「プルニエ」でフレンチランチ。伝統の味にモダンな感性が融合した本物のフランス料理をグルメジャーナリストが解説

東京會舘の「プルニエ」でフレンチランチ。伝統の味にモダンな感性が融合した本物のフランス料理をグルメジャーナリストが解説

東京會舘のメインダイニング「プルニエ」といえば、伝統の味と新しい感性が融合したお料理、そして心地いいサービスを誇る由緒正しきフランス料理店。目の前に運ばれてくる1皿は芸術的で、食材への深い理解と丁寧な仕事が凝縮されたメニューの数々がいただけます。新しい気付きで五感を満たす体験をかなえてくれる唯一無二のフレンチを、グルメジャーナリスト東龍さんの解説と共にオズモール編集部がレポート。

グルメジャーナリストの東龍さんが「プルニエ」のフレンチランチを体験

撮影:東龍

東京會舘の「プルニエ」は、1934年のオープン当初から受け継がれてきた伝統の味や古典を大切にしながら、松本シェフの感性を融合させたレストラン。
四季より短い期間で旬の食材を仕入れ、食材の個性を最大限に引き出す調理法を日々探求し、最高の料理を提供しています。
グルメガイドやメディアに登場することも多く、東京を代表するフランス料理店のひとつとして国内外から注目される存在です。

「食に定評のある東京會舘には伝統的なフランス料理の味が継承されています。どの料理も伝統的なフレンチの技法を用いていながらも、シェフの松本浩之さんによってモダンに革新されています。その”NEWCLASSICS.=新しくて伝統的”な味わいが楽しみです」と東龍さんも心躍ります。

コースの内容は、基本的には季節ごとに変更されますが、その時々の旬をとらえて最高の状態の食材を厳選、それに合わせて料理内容を変えているとのこと。

写真上 撮影:東龍

格式高い東京會舘のエントランスを抜け、2階に向かうと「プルニエ」が現れます。一歩足を踏み入れると、そこは皇居のお堀を望む特別感でいっぱいの空間が広がり、東京とは思えない雰囲気。

今回案内されたのは窓際のテーブル席。自然光が降り注ぎ、季節の移ろいを楽しみながらフレンチを味わえるなんてとても贅沢ですよね。デートや記念日にぴったりの雰囲気です。また、6席の個室が2つ設けられているので、大切な集まりや接待などさまざまなシーンにも利用可能。

「日本初の鮮魚介料理店としてオープンした原点に立ち返ろうと、店内は魚や水をコンセプトにしたデザイン。水の流れをイメージしたものや魚の装飾品が置かれていたり、テーブルクロスが鱗を模した柄になっていたりと、随所にこだわりが見られますね。日比谷通りの美しい緑は心を癒してくれて、他にはないロケーションですね」と東龍さん。

写真左下 撮影:東龍

まずはアミューズに、秋の訪れを感じさせるさんまのテリーヌが登場。山椒の香りがほんのりと漂う黒ごまのブリオッシュで挟まれています。右手の方にはすだちのジュレが添えられていて、テーブルに運ばれてきた瞬間から爽やかな香りがふわりと立ち上り、食欲をそそります。

すだちのジュレはキリッとした酸味と甘味のバランスがよく、これだけでもおいしいけれど、さんまと一緒に味わうと、その脂身や旨味を引き立て、後味はさっぱりとさせてくれます。「この2つがフレンチに仕立てられるなんて!」と東龍さんとともにスタートから驚きでいっぱいに。

ドリンクは、ソムリエとの会話を楽しんで、料理にも自分の好みにも合う1杯を選びましょう。
まずは厚みのある辛口のシャンパーニュをセレクト。熟した柑橘やブリオッシュなどの複雑な香りで素晴らしく、さんまの旨味に寄り添います。
ワインはフランスを中心に、料理に合わせて世界中のワインを提案してくれるのも楽しい。

写真上 撮影:東龍

ヨーロッパ産オマールブルーのミ・キュイ(半分だけ火を通したもの)が登場。運ばれてきた瞬間、その盛り付けに思わず「美しい!」と声が漏れてしまいました。上にはフランス産のキャビア、下には香味野菜とオマールのお出汁とクリームを使ったソースが敷かれています。
オマールブルーは部位ごとに調理方法を分けていて、ミ・キュイに使われているのは胴体です。

「味わい深いオマールエビに、魚介の旨味が凝縮されたソースと、キャビアの塩味が絶妙なバランスで、前菜らしく軽やかながらも満足感があります。1皿で、3つの異なる調理法のオマール海老を味わえることや、食器のセレクト、盛り付けも美しく、シェフの丁寧な仕事ぶりが窺えます」と東龍さん。

お皿の手前にある爪の部分は海ぶどうと粒状のオリーブオイルでシンプルにいただきます。プリっとした食感もよくて、スペインのきれいな酸味の白ワインともぴったり。
お皿の奥には、腕の部分をタルタル状にしてカナッペ仕立てにしたものが。軽めのタルタルにはハーブが効いていて、サクサクのバゲットの香ばしさと噛む度に調和していきます。

パンは東京會舘にあるベーカリーで毎日焼いているもの。この日は、ベーシックなバゲット、全粒粉を使ったパン、季節のパンとして湘南の白茄子のペーストが練り込まれたパンの3種類がラインナップ。季節のパンは旬の素材によって内容が都度変わるので、いつ訪れても新しい味わいを楽しめます。白茄子のパンは優しい甘味、旨味を感じて新しい体験でした。

そして、キャンディー型のバターにもご注目を。こちらはフランス産で格付け認定されたもので、ミルキーな風味に塩味が絶妙に効いていて、ついつい多めに塗ってパンを食べてしまうほどおいしいんです。
実は、編集担当もこのバターがすっかり気に入って、プライベートで購入したり、友人へのギフトにしたりしているほど。
東京會舘のショップで購入できるので、お食事を楽しんだ後のお土産にもおすすめです。

撮影:東龍

続いては、白桃の冷製スープが登場。食材を凍らせてスープにするアイデアは、シェフが2019年に東京會舘に就任される前から考案していたもので、現在ではスペシャリテとして提供されているそう。
使っている桃は時期によって品種を変えていて、この日は新潟の「なつおとめ」。凍った桃を器に見立て、中には桃とヨーグルトのようなニュアンスを感じるスープが注がれています。
添えられているラベンダーと一緒に味わうと、より豊かな風味に。

この1皿には東龍さんも新しい発見があったようです。「器になっている桃をスプーンですくってスープと一緒に味わうと、シャリシャリとしたシャーベット状の桃の食感がアクセントになり、また違った楽しみ方ができますね。ほんのりと甘い、華やかなロゼワインとの相性も完璧です」

器の部分はすべて食べられるので、お腹と相談を。丁度よいタイミングでサービスマンがナイフとフォークを持ってきてくださり、私たちはジューシーな桃を皮まで味わいました。

撮影:東龍

魚料理には、活スズキのアラヴァプール(蒸し料理)。泡状のムースは、ブルターニュ産ムール貝の出汁を泡立てたものです。香り豊かなソースは、スズキの出汁をベースにバターやセルフィーユ、イタリアンパセリなどのハーブを合わせたもの。スズキの繊細な白身はしっとりと柔らかく、上品なソースと絡めていただくと顔がほころびます。

アーティチョークの活かし方にもこだわりが。「ピューレ、フリット、蒸し焼きと3種類の調理方法が1皿で味わえるとは、シェフの仕事の細やかさを感じます。それぞれの食感や味わいが楽しく、贅沢な食体験がかないますね」と東龍さん。

撮影:東龍

メインディッシュには、牛頬肉の赤ワイン煮と旬の木の子、秋トリュフ添えを。牛頬肉は約3時間じっくり煮込んでいて、ほろりと崩れる柔らかさ。フランスのキノコもたっぷりで、ジロール、セップ茸など4種類を味わえます。

今回のコース料理の中で、東龍さんも特に記憶に残ったそう。「やわらかでゼラチン質な牛頬肉は、とろけるテクスチャーとギュッと凝縮された至味が秀逸です。イタリア・マルケ州のオータムトリュフはやさしい香味で、“先駆け”の時季に味わえる食味ですね。エスカルゴバターも実に香ばしいです。クラシックな料理ですが、レイノーのミネラルシリーズのメタリックな食器の輝きが、料理に彩りを与えています」

ブルゴーニュ地方のジュブレ・シャンベルタンという地区の赤ワインと共にいただきます。
繊細な果実の香りと果実味を感じ、気品ある味わいでまさにメインディッシュと一緒に味わうのにふさわしいです。
今回は7種類のワインをいただきましたが、それぞれのワインのポテンシャルを引き出すグラスをセレクトしてくださっていて、ワインがより一層おいしく味わえました。

撮影:東龍

デザートは2品。
1品目には、ピオーネのシャーベットにシャインマスカットのスライスをのせた、秋らしく見た目も美しい1皿が。
爽やかな酸味のシャーベットが口の中に広がり、シャインマスカットのスライスは、みずみずしい甘さをプラス。爽やかな香りのローズマリーのジュレはフルーツと優しく調和し、口の中がリセットされました。

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