50人に1人が発症する「強迫性障害」。幼児期から兆候が見られても、気づかれにくく治療が遅れてしまう傾向が【専門医】

50人に1人が発症する「強迫性障害」。幼児期から兆候が見られても、気づかれにくく治療が遅れてしまう傾向が【専門医】

パートナーに気になる様子があるときは、まずは相手の話を聞いて

強迫性障害の発症は10~20代に多いのですが、妊娠、出産などによるホルモンバランスの乱れや環境の変化によって30代以降でも発症することがあります。

――強迫性障害は、ママ・パパも発症することはあるのでしょうか。

向井 妊娠や出産によるホルモンバランスの乱れやストレスによって、強迫性障害を発症することはあり得ます。

――もしパートナーの様子がおかしいと思ったときは、どうしたらいいでしょうか。

向井 強迫性障害は、自分でも「おかしい」とはわかっていても、まわりの人には知られたくない・気づかれたくないと思う患者さんが多いです。まわりの人に、どのように思われるのかが気になるのです。
パートナーの異変に気づくと「解決してあげないと!」と思う人もいるでしょうが、相手の話をじっくり聞いてあげるだけでも心はラクになります。
そして相手の様子を見ながら、精神科への受診をすすめましょう。受診をためらうときは、お住まいの地域の保健所に相談してもいいでしょう。患者さん本人が相談に行くのをためらう場合は、パートナーが相談に行っても構いません。

――最後に映画『悠優の君へ』の感想を教えてください。

向井 脚本・監督を務める福原野乃花さん自身が、強迫性障害のつらさを知っているため、患者さんが苦悩する状況が、すごくていねいに描かれていると思いました。
先ほども述べましたが、強迫性障害は「人に知られたくない・気づかれたくない」という思いから孤立しやすい傾向があります。しかし映画の中では、強迫性障害に苦しむ優乃を、友だちの悠が支えてくれるんです。この病気は、理解して支えてくれる人がいることが大切です。
映画『悠優の君へ』を通して、この病気のことを理解してくれる人が増え、患者さんが生きやすい社会になってくれることを願います。

お話・監修/向井馨一郎先生 協力・写真提供/© 2023「悠優の君へ」製作チーム 取材・文/麻生珠恵 たまひよONLINE編集部

向井先生は「強迫性障害は早期発見と適切な治療が大切で、家族の気づきがカギになる」と言います。また向井先生のグループは、強迫性障害などの精神疾患について理解を深めてもらうための無料アプリ「Fuasil-o(フアシル)」を開発しています。

毎年10月第2週のOCD Awareness Week(強迫症啓発週間)は、アメリカで始まった啓発イベントで、日本でもOCD-Japan主催のセミナーなどが開催されます。

向井馨一郎先生(むかいけいいちろう)

PROFILE
医学博士。兵庫医科大学精神科神経科学助教。兵庫医科大学病院精神科神経科外来医長。専門は、精神神経科全般、神経症性障害。日本精神神経学会専門医・指導医、日本医師会認定産業医、公認心理士。

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