「人食いバクテリア」とも呼ばれる劇症型溶連菌。感染すると影響が出やすい妊娠期は特に注意して【医師監修】

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これも知っておきたい!RSウイルス感染症って?妊婦さんもワクチン接種できるようになった理由

子どもが感染することが多いRSウイルス感染症は、妊娠中のワクチン接種が話題になっています。子どもの重症化はよくいわれていますが、妊娠中に感染した場合はどうなるのでしょうか。また、おなかの赤ちゃんへの影響はあるのでしょうか。

――RSウイルス感染症について、子ども向けの重症化予防の注射*はありましたが、妊婦さん向けにRSウイルスワクチンが接種できるようになったそうですね。妊娠中のママも感染しにくくなるのでしょうか。
*抗 RS ウイルスヒトモノクローナル抗体製剤(シナジス®)

土屋 RSウイルス感染症は、RSウイルスの感染によって起こるもので、発熱、鼻汁などの軽い風邪症状から肺炎まで症状はさまざまです。早産で生まれるなどして、呼吸器系が未熟なお子さんがRSウイルスに感染すると重い肺炎になりやすいといわれています。そのため、重症になる危険性があるお子さんに限り、保険診療でRSウイルスの予防接種(シナジス®)の注射をすることが認められています。

ところが最近になって、早産児だけでなく、基礎疾患のない正期産(せいきさん)で生まれた赤ちゃんに対しても重症化の恐れがあるということがわかりました。そこで妊娠中のママにもRSウイルスワクチンを接種できるようにしたのです。

――では、妊婦さんへのRSウイルスワクチンは、生まれてくる赤ちゃんのためなのですか。

土屋 そうです。おなかにいるうちに免疫をつけてしまおうという目的です。ママの重症化予防ではなく、あくまでも生まれてくる赤ちゃんの重症化予防のためのワクチンです。ワクチンを接種することで、RSウイルスの抗体がママの体でつくられ、それが胎盤を通して赤ちゃんに移行して、RSウイルスによる重症化を防ぎます。

――妊婦さんがワクチンを接種する場合、接種のタイミングはいつがいいのでしょうか。

土屋 妊娠中のどの時期でも接種はできますが、妊娠24週から36週の間に1回が望ましいといわれています。ママにワクチンを接種してから3~4週間でママにできた抗体が赤ちゃんに受け継がれ、3〜6か月くらい予防効果を発揮します。ですので、妊娠してすぐに接種した場合は産まれるまでに予防効果がなくなってしまう可能性があり、妊娠28週から36週に接種することでより有効性が高くなるといわれています。

――妊婦さんやおなかの赤ちゃんへの副反応の心配はありますか。

土屋 基本的にRSウイルスのワクチン特有の副反応というよりは、ほかのワクチンと同じように、接種した部分の腫(は)れや痛みがあります。中には、頭痛や発熱、倦怠感が見られる場合もあります。

――実際にどのくらいの妊婦さんが接種していますか。

土屋 2024年の6月に接種が始まったばかりで、産婦人科では、このようなワクチンがあるということを妊婦さんに情報提供し、希望者にのみ接種している段階です。ワクチンは今のところ自費なので、3万円前後かかり、決して安価なものではありません。

新しいワクチンなので接種をすることに不安を覚える妊婦さんもいるでしょう。不安が強い場合には、無理をして接種することはありません。参考になりますが、これまで生まれた赤ちゃん向けのRSウイルス感染の重症化予防の注射(シナジス®)がありましたが、これは早産など小さく生まれた赤ちゃんや病気を抱えている赤ちゃんのみに保険診療で投与されていました。実は2024年5月に流行期に1回の投与のみで5か月間予防効果がある注射(ベイフォータス®)が登場しましたが、残念ながら正期産(満期で出産)の赤ちゃんには保険は適用されず、1回60-200万円!と高額な費用がかかります。重症化予防の方法の選択肢が拡がったのは大変よいことですが、母子ワクチンに比べると手が出にくいと言わざるを得ません。産婦人科医の立場としては、RSウイルスの重症化を防ぐ選択肢の一つとして等しく情報提供をしているところです。

参考

妊婦に接種する RS ウイルスワクチンについて/日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会

監修/土屋裕子先生 取材・文/樋口由夏、たまひよONLINE編集部

「季節にかかわらず感染症には注意が必要です。インフルエンザや新型コロナウイルスはもちろん、妊婦さんのサイトメガロウイルス感染も増えています。引き続き、予防に努めましょう」と土屋先生。妊娠中に感染してしまうと、母子共にリスクが高い感染症はほかにもありますので、注意しましょう。

●記事の内容は2024年9月の情報であり、現在と異なる場合があります。

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