本門佛立宗の僧侶から性暴力、被害受けた弟子の尼僧「大きな怒りを感じています」 宗務本庁は「非常に遺憾」

本門佛立宗の僧侶から性暴力、被害受けた弟子の尼僧「大きな怒りを感じています」 宗務本庁は「非常に遺憾」

本門佛立宗の40代尼僧が10月11日、千葉県内で記者会見を開いて、師匠で、寺の住職をつとめていた50代僧侶から、抗拒不能の状態で性暴力被害を受けたと公表した。

尼僧の代理人、國松里美弁護士によると、2023年7月7日ごろの行為について、僧侶は準強制わいせつ事件の被告人として罪に問われており、今年9月3日に千葉地裁八日市場支部であった第1回公判で、公訴事実を認めた。その翌日に保釈されたという。

被害にあった尼僧、Aさんによると、本門佛立宗の宗務本庁は、事件が報道されれば、本門佛立宗とAさんにメリットとデメリットがそれぞれあると説明したという。Aさんは自分の口をふさぐようなものを感じたと話す。

本門佛立宗の宗務本庁(京都市)は弁護士ドットコムニュースの取材に「起こったことについては非常に遺憾」とコメントした。次回10月29日の期日で結審する予定だ。

●絶対服従を強いられてきたことが問題の背景

Aさんは2021年12月から僧侶見習いとして千葉県の妙恩寺で修行を始め、2022年6月に出家した。早朝に自宅から寺に通って修行してきた。Aさんによると、住職をつとめていた僧侶から”師匠は絶対である”と教わり、異論や拒否はできない状態にあったという。

起訴事実は、僧侶は2023年7月7日ころ、妙恩寺の中で、師匠の立場にある僧侶を拒絶できないことに乗じて、Aさんにわいせつな行為をしようと、キスや服をめくって胸を手で揉み、下着の上から陰部を指でなでたというもの。

男性は触るなどの行為自体は認めながら、わいせつな行為ではないと一貫して否認していたが、9月3日の初公判直前になって、女性側に認めたという。

今回の裁判で罪に問われている行為のほかにも、日常的に2023年11月頃までわいせつ行為は続いたとAさんは説明している。

Aさんの代理人、國松弁護士は「本門佛立宗の教義では、触って罪障(修行の妨げになるような行い)を確かめたり、それを直すというものはありません。しかし、僧侶は、教義にはなくても、それは彼女の罪障を確かめたり、落とすために触れた。猥褻な意図はないと一貫して否認していました」と説明する。

國松弁護士は、宗教の教義の中で「絶対服従を強いられてきたこと」が被害の背景にあると指摘した。

●尼僧の女性「誰かの力になりたい。公表に踏み切った」

記者会見で、Aさんは「加害者に対して大きな怒りを感じています」と涙した。そのうえで「私の服を脱がせ、体を触ることの意味がわからず、混乱して頭が真っ白でした」と振り返った。

僧侶から「弟子は師匠の言うことにすべて『はい』と従い、返事は『YES』のみ。『NO』はない」などと厳しく教え込まれていたことから、性被害を受けたことがショックなのに、師匠である僧侶に疑問を感じる自分を「自ら戒める」こともあり、気持ちが乱れたとした。

精神的に傷つき、精神科に通院しているという。一方で、今回の公表は、社会的制裁を与えたいという思いから踏み切ったわけではないという。

「身内や宗門からの反対もあり、声に出すことは悪なのかと悩みました。ですが、公表することで、性暴力や性犯罪について1人でも多くの方に関心を持っていただくことと、今まさにとても苦しい思いをしている人たちの誰か1人にでもこの声が届いて、ほんの少しでも気づきや力になれればという思いで踏み切りました」(Aさん)

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