「人生のピークは遅いほうがいい」が家訓。ゆっくり育てば楽しみが先に残る【ヨシタケシンスケインタビュー】

「人生のピークは遅いほうがいい」が家訓。ゆっくり育てば楽しみが先に残る【ヨシタケシンスケインタビュー】

幸せかどうかの結論を保留にする勇気

――息子さんが中学受験をしたそうです。

ヨシタケ 二男が去年中学受験をして、すごく大変でした。それはそれは、もうあと3回くらい続けて「大変だったんです!」と言いたいくらい大変でした。

長男は勉強が得意なほうで、中学受験をしてうまくいったので、二男もチャレンジしてみたんですが・・・二男の場合は、苦労してかわいそうでした。その苦労がのちに役立つのかって、だれにもわからないし、なにも保証できないし。中学受験は一度踏み込むと、やめるにしてもやめないにしても、地獄だなぁと感じました。

――下の息子さんは今は?

ヨシタケ 中学生になって、ふわふわしながらも学校に通っています。二男の中学受験を経験して思うのは、幸せかどうかを今決める必要はないな、ということです。そのときその人が幸せかどうかって、5年10年たたないとわかんないと思うんです。

この子はこれで大丈夫なんだろうかとか、たとえば学校でうまくいっていないとか、休みがちで大丈夫かなとか、そういう大きな話は結論を急がなくてもいいんじゃないか、と。先のことはわからないし、人の価値観も考えもコロコロ変わりますから、取りあえず今日を乗りきる、その繰り返しでいいはずです。幸せかどうかの結論を保留にしておく勇気も、とくに子育て中は大事なんじゃないかなあ。

大きな目標や長期的なプランを立てる必要があるときもあるけど、ないほうがうまくいく僕みたいな人もいるわけです。いろんなやり方、生き方があるっていう当たり前のことを、どう伝えればイメージしてもらえるのかな、というのは、本を書くときにいつも考えています。

お話/ヨシタケシンスケさん 撮影・取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

ヨシタケさんのアトリエでのインタビュー。大人気絵本作家だけれど「子どもは苦手だった」ことや「失敗談を伝えたい」ことなど、ヨシタケさんらしく思えるエピソードを話してくれました。

インタビュー後編では子育てをしてよかったと感じたことや、新刊絵本のことなどを聞きます。

ヨシタケシンスケさん

PROFILE
1973年神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。絵本デビュー作『りんごかもしれない』で第6回MOE絵本屋さん大賞第1位になったほか、ボローニャ・ラガッツィ賞特別賞、ニューヨーク・タイムズ最優秀絵本賞など、受賞多数。近著に『メメンとモリ』『おしごとそうだんセンター』『ちょっぴりながもちするそうです』などがある。2児の父。

●記事の内容は2024年9月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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