『セクシー田中さん』(小学館刊)の8巻が10月10日に発売されました。作者である芦原妃名子(あしはら・ひなこ)先生が今年1月に逝去されたことで“未完”の最終巻に。
長年、芦原先生の作品に魅了されてきた筆者は、未だ心に残る哀しい気持ちと共にページをめくりました。涙なくしては最後まで読めなかった『セクシー田中さん』8巻について、ご紹介させてください。
※以下、同書の裏表紙・帯に記載の情報以外で、本編物語の核心に触れるネタバレはありません。
生きづらさを抱えた現代人に優しく寄り添ってくれる
『セクシー田中さん』では、アラフォーで地味な経理部のOL・田中さんと、婚活に励む派遣OL・朱里が、年齢を超えて友情を築いていきます。また田中さんが憧れている打楽器奏者・三好(既婚者)や、偏見まみれだったが田中さんに影響される銀行マン・笙野など、ふたりを取り巻く登場人物たちが刺激し合って成長する物語。
「自己肯定感の低さ故に生きづらさを抱える人達に、優しく強く寄り添えるような作品にしたい」という芦原先生の想いがつまった作品です。(上記「」内は『セクシー田中さん』8巻より。また芦原先生が生前ブログに綴られた内容/現在は削除)
人間としての解像度が高く、ご都合的なキャラも“悪者”もいない
ご都合的に登場するキャラが一人もいない。キャラクター造形を固定観念の枠にハメることも、登場人物の誰かを一方的に悪者にすることもしない。登場人物たちを一面的に捉えることなく、人間としての解像度が高い描き方がとても秀逸です。
そんなキャラクターたちの人生が、さまざまな出逢いによって思いもよらない方向へと展開していくところに、惹きこまれていきます。そして、読む者の心に優しく寄り添ってくれるセリフが随所に散りばめられており、実に芦原先生らしい作品といえるでしょう。
配信: 女子SPA!