●盗難品だった場合、どのような罪に問われる?
なお、「盗難品」である場合には、次の犯罪が成立する可能性もあります。
▼売主が自分で盗難してきた→窃盗罪
売主が桃を自分で盗んできた場合には、当然ですが窃盗罪(刑法235条。10年以下の懲役または50万円以下の罰金)が成立します。
▼売主が盗品をどこかから仕入れている場合
売主が、盗品を仕入れている場合、それが盗品だと分かって仕入れていれば、盗品有償譲受罪(刑法256条2項。10年以下の懲役および50万円以下の罰金)が成立します。
▼売主が桃の産地を偽って販売→詐欺罪
盗品、しかもどこか素性がわからないもの(例、動物園の餌を盗んでくるとか)を「山梨県産地直送新鮮果物」などとして販売すれば、購入者に対する詐欺罪(刑法246条1項。10年以下の懲役)が成立します。
▼二つの罪の関係
以上みてきたように、自らが盗んできた品や、買い受けた盗品を、事情を知らない人に売却した場合には、仮に前者なら窃盗罪と詐欺罪になる、といえます。
この場合、この2つの罪の関係が問題となります。後の詐欺が、前の窃盗で評価され尽くしていると考えると、後の詐欺罪では処罰されないことになります(「共罰的事後行為」などといいます)。
しかし、本件のようなケースでは、窃盗罪と詐欺罪はそれぞれ別の被害を生んでいるため、併合罪(刑法45条前段)になると考えられます(最判昭和25年2月24日、最決平成14年2月8日、東京高判平成10年12月10日等参照)。
この場合には、重い罪の1.5倍までの刑を科されることとなります(刑法47条前段。最長15年。ただし実際にはここまで重くならないでしょう)。
●買った客も罪に問われる?
なお、盗品だと分かっていて桃を買った場合には、買った客にも「盗品有償譲受罪」が成立しかねません。
一般的には、盗品とわかって購入するような機会はないはずですから、この罪に問われる可能性はほぼないと言ってよいでしょう。
配信: 弁護士ドットコム