●「争う余地はある」
──今回のケースについてはどうでしょうか。
相談者に「それまでの勤続の功を抹消又は減殺するほど著しい背信行為」があったか否かは、十数万円という横領額を考えると非常に難しいところです。
他の裁判例では、18万円の横領を理由とする退職金の不支給が有効とされたケースもありますが、そのケースでは、労働者が公務員であったこと、横領行為を繰り返していたこと、不正行為を認めずに反省や被害弁償もなかったこと、過去にも懲戒処分歴があるなどの事情もありました(札幌高裁平成27年9月11日判決)。
今回のケースで仮に退職金を不支給とされたとしても、争う余地はあると思いますので、弁護士に直接ご相談されることをお勧めします。
【取材協力弁護士】
田代 隼一郎(たしろ・じゅんいちろう)弁護士
田代 隼一郎(たしろ・じゅんいちろう)弁護士
2012年に弁護士登録し、以後10年以上、労働問題を含む多数の事件を解決に導く。労働問題については、労働審判・労働訴訟・労使間の団体交渉などの分野で代理人として活動。個別の事件のほか、商工会議所をはじめとするセミナー講師、新聞・テレビ番組での意見発信、YouTubeでの情報発信にも務める。YouTube動画リスト: https://youtube.com/playlist?list=PLbbwKaZ1VWS3Ga4anZDwuq9zvlqFPg8GI
事務所名:有岡・田代法律事務所
事務所URL:https://at-lawoffice.net/
配信: 弁護士ドットコム