トナラー。
私の友人たちはその響きに「なんのこと?」と首を傾げましたが、「明らかに他にスペースがたくさんあるのに、真横にいきなり座ってきたりする人」と説明すると、「あるある!」と大きく頷いていました。
地下鉄の座席や飲食店、はたまたヨガスタジオ、駐車場などでも起きがちな「トナラー」現象に、みなさん一度は違和感を覚えた経験があるのでは?
性的な目的は言語道断、糾弾する他ありませんので今回この場では考慮に入れませんが、そもそもどういう心理で……ということに率直に疑問を持っている方もいらっしゃることでしょう。
お寿司でビールをちびちびとやっていると……
先日、じつは私も体験したトナラーの怪。私は昔からどこでも一人行動、一人ご飯と言うのがまったく苦ではないタイプ。ある、カウンター席のみのコンパクトな回転寿司店に足を運んだときのことでした。
ランチの時間帯からは少し過ぎていたせいか、お客さんはまばら。意気揚々と席につき、一人、昼ビールをちびちびとやりながら、壁にかかっているお品書きを眺めつつ、何を注文しようか……いやいや、レーンに流れてきたものを取るのが楽しいよね、なんてウキウキとお寿司を満喫しておりました。
ちなみに一人で外食する際のポリシーとして、食べながら携帯電話を見たりというのは邪道。黙々と食べ、さっと席を立つと言うのが信条ですので早々にお店を後にしようと考えていた矢先、おもむろに私の真横、右隣の席の椅子がガっと引かれた気配が。
納豆巻きを口に運びながら、ん? と顔を向けると、赤いウィンドブレーカーを着用したボブヘアー、40代半ばほどの女性がさっとそこに腰を下ろしたのです。
あれ? お店の中、これだけ席が空いているんだけど…… 1席開けることもなく、ぴったりと私にくっつくような形で、女性が隣に座ってきたのです。さて次は何を食べるかとレーンへ伸ばしかけていた手を、思わず引っ込めてしまいました。
冷静になり、なんとなく察したこと
そんな私の戸惑いに満ちた視線を尻目に、赤ウィンドブレーカーの女性は無表情でさっと私の目の前にあった醤油の瓶を取り自分の目の前の小皿に入れ、そしてすみやかに戻し、さらに私の右肘のあたりにあったお茶用の給湯器にグッと湯のみを押し付け、緑茶をテキパキと作り始めています。
あまりの近さに、その湯のみから飛び跳ねたお湯のしずくがこちらに飛んできそうなほど……。彼女はこちらを一瞥することもなく、レーン内に立っていた大将に声をかけ、お任せセット1人前を注文したのでした。
当初ドギマギした私でしたが、徐々に冷静になりなんとなく察したことは、周りから見ると、私たちは女性2人連れでお寿司を食べに来た友達同士に見えなくもないのではないかということです。
これはもしかして、彼女は仲良しの女性2人同士でお寿司を食べに来たというふうに周囲に見せるべく、ここに座ったのではないか……と想像しました。入店してすぐになんとなく年恰好が似た同性を選びとり、隣にすみやかに着席したのでは、なんて私は直感的に感じた訳です。
配信: 女子SPA!