定年して毎日家でゆっくりしていたら、妻から「暇なら働いたら?」と言われました。生活費は足りているはずなのですが、お金以外に働く理由はありますか?

定年退職して数ヶ月、毎日ゆっくり過ごしているAさん。妻が「暇なら働いたら? 」とちょくちょく言ってきます。退職金と年金があるので生活費は足りているはずなのに、なぜ働かなければならないのか疑問に思っているそう。定年後に働く意味はお金以外にあるのでしょうか。定年制度の実態と高齢で働く人の理由から解明していきましょう。

60歳以降の給与は下がる

現在70歳までの雇用が企業の努力義務化されているため、働く意思があれば70歳まで働ける環境が整いつつあります。

 

しかし、厚生労働省「令和5年 高年齢者雇用状況等報告」によると、定年制度を廃止している企業は少なく、7割~8割の企業が60歳での定年制をとったまま、その後は継続雇用や業務委託など企業の状況に応じた雇用形態になるのが一般的です。

 

そのため、多くの企業では60歳を過ぎると待遇面での変化が予想されます。国税庁「令和4年度 民間給与実態統計調査」によると、年齢別の平均給与(男女合計)は、55歳~59歳の546万円をピークに60歳~64歳では441万円(30代前半とほぼ同水準)になり、65歳~69歳では342万円(20代前半と同水準)まで下がっています。

 

60歳以降はそれまでの給与と比べて平均でも約2割減るのが一般的で、働くモチベーションが下がることもあるでしょう。

 

60歳での定年退職者は少ない

給与面での譲歩を余儀なくされても、実際に60歳で定年退職する人は少ないです。先の厚生労働省「令和5年 高年齢者雇用状況等報告」によると、60歳定年企業での定年退職者はわずか12.5%、継続雇用者は87.4%です。

 

なぜ、ほとんどの人が定年後も働き続けるのでしょうか。内閣府「令和4年度 高齢者の健康に関する調査」 では、65歳以上で仕事をする人の理由で最も多いのは、収入のため(41.6%)、次いで老化防止(20.2%)となっています。

 

つまり、高齢でも働き続ける理由は「お金と健康への不安」です。Aさんのようにお金の不安はなくても、今後健康面への不安は出てくるかもしれません。

 

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