「事業系ごみを家庭ごみとして出した」 古い知人に頼まれて断りきれず…不法投棄の片棒担いだ男性の後悔

「事業系ごみを家庭ごみとして出した」 古い知人に頼まれて断りきれず…不法投棄の片棒担いだ男性の後悔

「自営業の知人の頼みで事業系ごみを家庭ごみとして出してしまった」。どうしても断りきれず、後悔しているという男性が弁護士ドットコムニュースの取材に応じた。

事業者が事業系ごみを家庭ごみとして出した場合、不法投棄として懲役刑が科されることもある。それに加担した場合も同じような問題が生じる。男性の懺悔を聞いた。

●事業ごみは一度にたくさん捨てられない→知人に頼まれて家庭ごみに

弁護士ドットコムニュースのLINEに連絡をくれたのは、東京都の多摩地区のアパートに住む50代、柳井寛さん(仮名)。

自営業の知人に「事業系のごみを一般ごみ(不燃)として、かわりに捨ててくれないか?」と頼まれて、金属やプラスチックを家庭ゴミに紛れこませて昨年から2度捨てたと語る。

柳井さんと知人が住む地域では、事業ごみの処分にはお金がかかり、一度に出せる量も決まっている。

「本当はダメなこととはなんとなくわかっていました。いけないことなのに協力してしまって、今となっては後悔しています」

およそ40年にわたって家族ぐるみの付き合いがあり、親しくしてもらっていたことから協力したが、今年の春に知人と絶交したという。

低い山を登るのが趣味の柳井さんは、知人から「富士山以外の山は丘だ。富士山以外の山に行くのは低脳の証拠だ」と暴言を吐かれ、許容できなかったそうだ。それ以来、話すことはないが、ごみのことがいつまでも胸に残っている。

●ごみ問題にくわしい弁護士「不法投棄に該当して処罰の対象となる」

弁護士ドットコムの法律相談にも、近所の飲食店が、事業系ごみを家庭ごみの袋に詰めてゴミステーションに捨てたといった体験談が寄せられている。

大したことがないと思っていても、事業系ごみを捨てたり、事業者に協力したりすることは廃棄物処理法に違反する行為だ。ごみ処理の問題にくわしい芝田麻里弁護士は次のように指摘する。

——事業系ごみを家庭ごみの集積所に出して処分すると処罰の対象となるでしょうか。頼まれて協力した場合にも問題はありますか

柳井さんがご心配されるとおり、事業系ごみを家庭ごみとして捨てることは、不法投棄(廃棄物処理法16条)にあたる行為であり、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科される犯罪です(同25条1項14号)。

事業ごみのうち「産業廃棄物」として定められているものについては「産業廃棄物」の収集運搬の許可を有する業者に処理を委託しなければなりません。

たとえ家庭ごみのごみ捨て場に捨てたとしても、廃棄物処理法のルールに違反した捨て方をした場合には、廃棄物処理法違反で処罰の対象となります。

事業系の金属ごみやプラスチックごみは、産業廃棄物にあたります。柳井さんの行為は産業廃棄物を家庭ごみのごみ捨て場に捨てたとして不法投棄に該当します。

【取材協力弁護士】
芝田 麻里(しばた・まり)弁護士
弁護士法人芝田総合法律事務所代表弁護士。公益社団法人全国産業資源循環連合会の顧問及び監事、一般社団法人東京都産業資源循環協会の顧問などを務める。産業廃棄物関連の問題(行政事件・行政交渉・刑事事件・民事事件)に注力。2011年弁護士登録。東京弁護士会所属。
事務所名:弁護士法人芝田総合法律事務所
事務所URL:https://shibatalaw-ginza.jp/shibatalaw.sakura.ne.jp/

関連記事:

配信元

弁護士ドットコム
弁護士ドットコム
「専門家を、もっと身近に」を掲げる弁護士ドットコムのニュースメディア。時事的な問題の報道のほか、男女トラブル、離婚、仕事、暮らしのトラブルについてわかりやすい弁護士による解説を掲載しています。
「専門家を、もっと身近に」を掲げる弁護士ドットコムのニュースメディア。時事的な問題の報道のほか、男女トラブル、離婚、仕事、暮らしのトラブルについてわかりやすい弁護士による解説を掲載しています。